Royalty Pharma

Royalty Pharma (ロイヤルティ・ファーマ)の決算の読み方

Provision for changes in expected cash flows from financial royalty assets

この非常に長い “Provision for changes in expected cash flows from financial royalty assets” を日本語にあえて訳すと、「金融ロイヤルティ資産の価格変動に対する引当金」とでもいえるでしょうか。

実はこの勘定項目、Royalty Pharma のビジネスモデルだからこそ発生する項目です。そして、この勘定項目があるからこそRoyalty Pharma の経営陣はnon-GAAPである “Adjusted Cash Receipt” と “Adjusted Cash Flow” という項目を作りだしたのです。

Royalty Pharma のビジネスモデルと減価償却

Royalty Pharma のビジネスモデルについては以前解説しました。

Royalty Pharma は製薬会社に資金を提供し、その代わりにロイヤルティ(お金)を受け取る権利を手に入れます。

Royalty Pharma(ロイヤリティファーマ) のビジネスを理解する *最終的な投資の決定は皆さんご自身の判断でお願いします。私は資格を持ったファイナンシャルアドバイザーではなく、あくまでも1人の素人投資...

しかし、このロイヤルティ(お金)の受け取りも、いずれ終わりがくる可能性があります。その代表的な例が、Humira®やRemicade®、HIV薬などの大型薬で、ロイヤリティファーマの収益は2019年、2020年でガクッと下がりました。

すごく単純にしたモデルで考えてみます。

例えば、あなたが私に100万円投資して、今後10年間毎年15万円受け取れる”権利”を買ったとします。15万円/年×10年間で合計150万円。割引率を考慮しなければ、150万円の価値がある権利を100万円で買ったことを意味します。

この「今後10年間に渡って、毎年15万円もらえる”権利”」というのは”資産” と考えることができます。この”資産”の現在の価値はいくらかと言うと、割引率を考えなければ15万円/年×10年で150万円です。

では、5年後にこの、「”毎年15万円もらえる”権利”」という”資産”はどうなっているでしょうか?既に5年に渡り15万円を毎年受け取ったので、残りは15万円/年×5年で75万円です。

ということは、もともと150万円の価値があった資産が、5年の間に75万円まで価値が下がったことを意味します。つまり、毎年資産の価値が少しずつ減っていたことを意味します。

この考え方を会計で「減価償却」と呼び、毎年いくらずつ減るのかを値段で表したのを「減価償却費」と呼びます。

Royalty Pharma が持つロイヤルティ収入を受け取る権利も同じ

先程の考え方は、Royalty Pharma のビジネスにも当てはまります。

Royalty Pharma は資金提供をすることで、長期に渡り薬の売り上げから収入を得る”権利” を受け取ります。これはRoyalty Pharma のバランスシートでは”Financial royalty asset” と呼ばれています。このFinancial royalty asset には、trikafta や Nurtec ODT などからロイヤルティを受け取る権利ももちろん含まれています。

そして、このFinancial royalty asset も時間の経過と共に価値が減少していきます。

この、1年間でFinancial royalty asset がどれだけ価値を失ったかを表したのが、今回の本題である “Provision for changes in expected cash flows from financial royalty assets” です。これは減価償却費と同じで、実際のお金の出入りを表した数字ではありません。なのでキャッシュフロー計算書(Cash Flow Statements) には登場せず、損益計算書(Income Statements)にのみ登場します。損益計算書では営業費用(Operating expenses) の場所に記載されています。

引用元:Royalty Pharma

数値を取り出すと、

(Provision for changes in expected cash flows from financial royalty assets の単位は million dollars)

となり、2019年はむしろ利益が出ていることが分かります。

これをグラフにしてみるとこんな感じです。

(Provision for changes in expected cash flows from financial royalty assets の単位は million dollars)

この “Provision for changes in expected cash flows from financial royalty assets” の特徴を理解できると、Royalty Pharma の決算書が読めるようになります!

次のページでProvision for changes in expected cash flows from financial royalty assets の特徴について解説します。

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あきふね
ハリーポッターの世界にあこがれた高校生が、大学時代と初期研修後にイギリスに留学。 10年以上どうしたら英語が上達できるか考え続け、合計約3年間イギリスに滞在。 ようやく自分なりの回答を見つけ、現在は次の海外進出に向けて準備中。 美容皮膚科医。 イギリス留学、英語について発信するのが何よりの楽しみ。