製薬業界の研究開発の特徴
今回の記事の中で、Royalty Pharma が一番関係するのはここだと思います。
ここをしっかり理解できると、Royalty Pharma が将来とても有望なことが分かると思います!
研究開発費とはなにか?
英語だと”R&D (research and development)” と言われる研究開発費ですが、これはどの業界においても重要なものです。
多くの大企業は新しい製品を開発するために予算の一部を研究開発費に充てます。分かりやすい例だと、スマートフォンやソフトウェア開発があります。Appleは毎年のように新しいモデルのiPhoneを発表していますし、GoogleやAmazonも今までになかったサービスを次々と提供してくれます。
これらの企業は競合他社との競争に勝ち、市場における優位性を保つために常に研究開発を続けています。ただ、テクノロジーの分野は進歩が激しく、1年前までは最新だった製品が、翌年には当たり前ということが常に起こっています。
それに対して、製薬業界というのは、新しい薬の開発に時間はかかるものの、一度完成してしまえば同じ商品が何年にもわたり売れるという特徴があります。しかも、その売り上げは年々増加する傾向があります。
製薬業界における研究開発費とは
では製薬業界における研究開発費にはどのようなものがあるのでしょうか?
CBOの資料によると製薬会社の研究開発費には5つの種類があるとされています。
①発見:新薬を発見し、研究するための費用
例えば、いわゆる認知症と言えばアルツハイマー病がありますが、決定的に有効な薬というのは実はまだありません。新薬を開発する為に様々な企業が研究を進めています。
因みに、Royalty Pharma はアルツハイマー病の治療薬候補、”Gantenerumab” のロイヤリティを持っています。(2022年8月現在、第三相臨床試験中で2022年の第四4半期に結果が出る予定)
②発展:臨床試験、FDA承認への申請、製造ライン
新薬を市場に送り出すには臨床試験 (Clinical trial) をいくつも合格する必要があります。後程解説しますが、このプロセスは非常に長く、とても費用がかかります。ちなみに、これこそRoyalty Pharma が繁栄する理由の一つでもあります。
臨床試験を通過した薬は、FDA(日本でいうと厚生労働省みたいなところ)の承認を得て市場に送り出されるのですが、その申請にも費用がかかります。
因みに1つの薬の承認を申請するためだけの費用で、2022年は約$3 million (日本円で約4億2000万円、1ドル140円)かかるようです。
③応用:既存の薬の新しい用量や他の疾患への適応、新しい投与方法をみつける
例えば、Royalty Pharma が持つロイヤリティの中でも稼ぎ頭である薬に、Imbruvicaという薬があります。これはもともと慢性リンパ性白血病(血液のガン)の治療薬として承認されました。
それが研究開発の結果、2022年8月に慢性GVHDに対しても承認されました。(慢性GVHDとは、せっかく臓器の移植を受けたのに、拒絶反応がずっと起こってしまっている状態です)
これにより、全く新しい薬を開発せずとも、薬の販売先を増やすことが可能となります。(つまり、Royalty Pharma の収入も増える可能性があります。)
④差別化:臨床第3相試験の費用
臨床試験については後程解説しますが、この第3相試験では、既存の薬と比べて新薬がどれだけ有効かを調べます。
この試験を行うには非常に費用がかかり、しかも失敗する可能性が高いです。製薬会社はリスクを分散したいと考えており、Royalty Pharma が収益を伸ばす可能性はここにもあります。
⑤安全確認:臨床第4相試験の費用
臨床第4相試験とは、市場に出た薬が本当に安全か確認するための試験です。新しいワクチンが市場に出回った後に、本当にそのワクチンが安全かを調べるための研究もこれに当たります。
次のページで研究開発費の特徴について解説します。