私が病院勤めを辞めてイギリスにワーホリに行ったのは、2018年の4月。
もうすぐ28歳になる目前で、初期研修医2年間が終了したタイミングだった。
イギリスに行ってからどうしたいか、ワーホリが終わってから、自分はどう生きたいかなんて全く分からなかった。
手に入れた自由を前にして、このプレミアムチケットをどのように使っていいのか全く分からなかった。
と言うより、考えるのが怖くて、計画するのを放棄していたという表現が正しいかもしれない。
”自分の人生が変わるかもしれない”
という直感に従い、私にとっては大きな勝負に出たつもりだった。
ただ、病院を辞めた直後に遊びに行った石垣島のホステルに宿泊する時に
職業:無職
と記入した瞬間に、
”お先真っ暗”
という気味の悪い、何とも言えない恐怖を感じたのも事実だ。

これからワーホリに行く人の中には、
今まで勤めてきた職場を退職していく人が多いと思う。
その中には、当時の私のように、
”この先どうなるか不安”
と感じている人がいるかもしれない。
ただ、一つ伝えたいことがあるとすれば、
”大丈夫、人生何とかなる”
ということだ。
そして、私にはワーホリに2年間行くだけでも大きな意味があったと思う。
今回は、”ワーホリに行くことで身に付いた力”について記録したい。
ただし、今回は “英語力” 以外の力について焦点を当てることとする。
何とかなると信じれる力
”大丈夫、人生何とかなるから”
これは、ワーホリに行く直前に受講したダイビング講習の先生がかけてくれた一言だ。
講習の合間に一緒に昼ご飯を食べている時に、
”これからワーホリに行くけど、先が見えなくて不安だ”
と言った時にかけてくれた言葉だ。
先生自身、努めていた大手宅配業者を退職して、ダイビング教室を立ち上げたのだが、色々と苦労したらしい。
その時の色々な武勇伝を語ってくれたのだが、結論は”人生何とかなる”だった。

自分自身、2年間のワーホリの間に色々なトラブルを経験した。
人種差別を経験したり、
大金が入った銀行口座が凍結され、新居に入居できなくなったり、
ある日突然ロンドンの家を追い出されて、ホームレス状態になったり、
予定していたインターンやボランティアが、親族の訃報や新型コロナウイルス出現によりキャンセルされてしまったり、
などなど。
しかし、全部乗り越えたし、現在ちゃんと仕事もしている。
しかも、
ワーホリに行かなければ決して出会うことのなかった職業と、破格の年収を手に入れることができた。
もちろん、
”生きるか死ぬか”が問われる”デンジャーなこと”
は話がまったく別だが、
日常生活で遭遇するトラブルや、仕事に関しては何とかなるという自信が付いた。
この力を手に入れるには、残念ながら苦労を経験する必要がある。
しかし、この苦労を一つずつ乗り越えることで、少しずつ自分に自信が付く。
ワーホリ期間中というのは、日本にいる時には想像しなかったトラブルに遭遇する。
トラブルに対処している時は大変なのだが、是非それを乗り越えて欲しい。
ワーホリが終わる頃には、
”自分は困難な状況を乗り越えることができる”
という自信が付いているはずだ。
そして、その自信があれば、ワーホリ後も生きていく方法はおのずと見つかる。
お金を管理する力
自分は渡英するまでに400万円ほどの資金を貯金していたが、
イギリスで仕事をしていたわけではなかった。
なので、1日すぎるごとに、どんどんと手元の資金が減っていく状態だった。
病院勤めの時は、月の手取り30万円程度で死ぬほど働いていて、色々と不満はあった。
しかし、毎月必ず給料がもらえることは保証されていた。
それがなくなった途端、どうやって生き延びればよいか、本気で考えるようになった。
1日の食費や交際費などの出費を£10に抑えて生活するにはどうしたらよいか、
お金をかけずにどうやって楽しく生活するか。
おかげで、色々と節約術が身に付いたし、
工夫して生活するということも覚えた。
何より、自分の料理の腕や家事のレベルが爆上がりし、
それに、本当に価値があるものにのみお金を払うということを覚えた。

この習慣は一度覚えるとなかなか抜けない。
それは、帰国してからも変わらない。
正直、日本に帰国してから、私は正直お金の事に関しては心配する必要がなくなった。
毎月必ず給料が銀行口座に振り込まれるし、しかも、かなり良い額が振り込まれる。
それでも、イギリス滞在時代の経験があるため、無駄に浪費するということが全くない。
毎月手取りの80%以上というかなりの額を貯蓄に回すことができて、
多いときは貯蓄率(手取りの何%を貯蓄に回すか)が90%を超えることがある。
これはワーホリ生活で培ったスキルと、
将来またイギリスに戻るための資金集めという目標があるため可能である。
すでに持っているものを、とってもありがたく感じる力
これは、前述の “お金を管理する力” にも関わっているのだが、
ワーホリ生活を送ることで、今まで当たり前と思っていたものの素晴らしさを改めて認識できるようになった。
日本という国がいかに恵まれた国かということも含めて、
家族や友達のありがたさ、
雨上がりの空に見える夕日や、近くの公園の眺めがどれだけ綺麗か、
などなど、普段当たり前と思っているものがどれだけ素敵なものかと考える習慣が付いた。
イギリスに住むというだけでも、
日本と比べていかに家賃が高いか、
銀行口座を開設したり、新しい生活を始めることがいかに大変か、
言語や文化が異なる環境で仕事を探すことがいかに大変か、
ということを身をもって経験することができる。
これは、
- 1人の社会人として
- 未知の国に飛び込み
- 自分の力を頼りに生きること
を経験した人にしか分からない。
私は愛知県出身で、大学は熊本、就職は東京という経歴があるが、
ロンドンで経験した2年間は、日本で色々な場所で過ごした時以上に多くを学んだと思う。
ワーホリという2年間を過ごした後に、海外でそのまま在住するというのも良い。
また、たとえ日本に戻ってきたとしても、日本という国がどれだけ住みやすい国かということを実感できるはずだ。
もちろんイギリスにしかない良い部分もあるのだが、
”今自分の置かれている状況の、良いところを見る”
という考え方は、自分の人生をより豊かにしてくれた。
健康を管理する力
これはワーホリという自由な時間があることで、
どうしたらより健康な生活を送れるか考えることができたことが大きい。
一般的に言われる、
- 運動すること
- バランスの取れた食事をとること
- ちゃんと寝ること
を実行するための時間を確保することができたのだ。
イギリスではジムに通うという文化が日本よりも進んでいて、
自分も筋トレするようになったし、
日本に帰国してからも自宅に懸垂マシンを設置して、運動するようになった。
食事のバランスを気を付けることで、風邪もひきにくくなることが分かったし、
”睡眠”をしっかりとることもできるようになった。
ワーホリに行く前までは、
”睡眠時間を削ってでも、勉強したり、仕事をしなくては”
という考えであったが、
ワーホリを経験しては、
”まずは自分の健康を優先しよう”
と考えるようになった。
睡眠がいかに大切かについてはこの記事でも解説している。
時間のあるワーホリの時にこそ、
睡眠時間を確保したり、自分の健康についてもう一度見直してみるのも良いと思う。
そうすることで、
”無理をしすぎない”
という生き方を体験することができる。
日本に住んでいる外国人のすごさが分かる力
自分がロンドンでアルバイトやインターンを探す経験をして分かったことは、
”自分の母国以外で仕事をすること、または仕事を探すというのが、いかに大変か”
ということだ。
日本であれば、すぐに就職できそうな職種であっても、
言語や文化の壁があると、難易度が上がる。
仕事をするだけでも大変なのに、
家賃や生活費を自分でやりくりしなければいけない。
この大変さは、自分の国を飛び出して自分で経験をしなければ分からない。

自分はワーホリに行って初めて、
日本で頑張って働いている中国人や、韓国人などの外国人の人たちがすごいと思った。
確かに彼らの日本語は完璧ではないかもしれない。
しかし、その状況で働き続けるというのが、いかにすごいことなのかというのを理解できるようになる。
”日本語もちゃんとできないし、もっとちゃんと働けよ”
とは思わず、
”日本人のために働いてくれてありがとう。これからも、がんばってね!”
とエールを送りたくなるものだ。
外国人に敬意を払うという感覚は、ワーホリ経験者だからこそ分かるものだと思う。
この経験をすると、
”あの定員は外国人だから、仕事ができない”
とか
”外国人のくせに”
なんていう程度の低い人種差別をすることはなくなる。
自分はイギリスで、
- 道を歩いているだけで F ワードを浴びせられた、
- レストランに着席したのに店員に無視されつづけた、
という経験がある。
自分が差別される側に立つことで、初めて気が付くことも沢山あった。
日本に住んでいる外国人定員を知らずのうちに見下してはいないだろうかと、もう一度考えてみて欲しい。
結局何が良いのか
結局、これらの力をワーホリで手に入れることで、何が良いのかというと、
- 何とかなると信じれる力 ⇒ 自分に自信が出る。ポジティブになれる。
- お金を管理する力 ⇒ お金がどんどん貯まるようになる。
- すでに持っているものを、とてもありがたく感じる力 ⇒ 幸せを感じる、人に感謝できる。
- 健康を管理する力 ⇒ 無理をしすぎない生き方を知る。
- 日本で働いている外国人のすごさが分かる ⇒ 今まで気づかなかった人種差別に気が付く
ということだと思う。
これらは、別にワーホリで何かすごいことを成し遂げたから得られる経験という訳ではない。
ただワーホリに行くというだけでも、これらを経験することができる。
ワーホリに行くだけでも
- ポジティブになる
- お金が貯まるようになる
- 人に感謝できるようになる
- 無理しないで生きるようになる
- 外国人に優しくなれる
のだ。
これだけでも、自分はワーホリに行って良かったと思っている。
まとめ
- 全くの無計画でも、ワーホリは行くことに意味がある。
- 今しかできない貴重なワーホリを、思う存分楽しみましょう。
