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Royalty Pharma (ロイヤリティファーマ)の薬のすごさ-医者の視点でPaypal の創始者から学ぶ-

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前回はRoyalty Pharma のビジネスモデルの概要について解説しました。

Royalty Pharma(ロイヤリティファーマ) のビジネスを理解する *最終的な投資の決定は皆さんご自身の判断でお願いします。私は資格を持ったファイナンシャルアドバイザーではなく、あくまでも1人の素人投資...

今回は、Royalty Pharma の薬のすごさを、医師の視点と、そしてビジネスの視点から考えてみたいと思います。

Royalty Pharma の扱う薬

まずはRoyalty Pharma がどんな薬を扱っているのか見てみましょう。

(2022年のsecond quarterly report, Royalty Pharma 10-Q Quarterly Report より)

なんのことか、さっぱり分かりませんね。

私もそれぞれの薬を1つずつ調べなければわかりません。

まず一番上にあるRoyaltiesですが、これは以前の記事で解説しました。

Royalty Pharma(ロイヤリティファーマ) のビジネスを理解する *最終的な投資の決定は皆さんご自身の判断でお願いします。私は資格を持ったファイナンシャルアドバイザーではなく、あくまでも1人の素人投資...

つまり、Royalty Pharmaがロイヤリティ(Royalty:お金)を受け取る権利を持っているお薬の一覧です。

次のMarketer (s) は、それぞれの薬の販売元、最後のTherapeutic Area は治療領域です。

この図をぱっと見せられただけだと何がすごいのか分からないと思いますが、医師の視点、そしてビジネスの視点でみるとそのすごさが分かります。

医師の視点

まずは、医師の病気に関する考え方について説明します。

病気を分類する際、色々な方法があります。

まず一つ目は、治るか、治らないか。

そしてもう一つは、一般的(コモンディジーズ )か、非常に珍しいか(レアディジーズ)

です。

これらの基準で考えた場合、こんな図が出来上がります。

一般的で、治る病気

例えば、冬によく流行るインフルエンザの場合、みんなよくかかるし、基本的には治るものだと思っているかと思います。

インフルエンザの治療薬タミフルは需要は高いですが、治ってしまえばだれも使いませんし、むしろタミフルは必ず必要なものではありません。

売れるときは売れるけど、売れないときは全然売れない薬になります。

一般的な病気で治らない

では、喘息はどうでしょうか?

喘息は一般的な病気ですが、残念ながら完治させることが難しいです。例え今は症状がなかったとしても、突然の発作のために、お守りとして吸入器を準備している人もいます。

他にも、花粉症や認知症、糖尿病、片頭痛もこの分類に当てはまります。

基本的には治らない病気なので、継続して薬が売れる可能性が高いです。そして、患者の数が多いため、ヒットすれば儲けることができます。

ただ、患者数が多いということは、症例データも集まりやすいため、新しい薬がどんどんと出てきて競争が激しいです。(花粉症の治療薬、抗アレルギー薬は本当に色々な薬が次々と出てきています。ただ最近は、舌下免疫療法で根治を目指す治療も保険適応になりました。)

この領域で売れる薬になるためには、他の薬にはない特徴を兼ね備えた商品である必要があります。

治るけど珍しいもの

では、治るけど、珍しいものには何があるかというと、麻疹や風疹などがあります。

ワクチン接種が一般化したお陰で、麻疹や風疹の患者さんに出会うことが、かなり珍しくなりました。そして、麻疹や風疹は、一部の人を除いて(子供や妊婦がかかった場合、大変なことになる可能性があります!)、かかったとしても治る病気になりました(特に成人男性など)。

これはビジネスとして、一番おいしくないかもしれないです。

珍しいため、販売できる数が限られます。そしてなにより、何もしなくても治ってしまう領域なので、お薬自体が売れない可能性があります。

珍しくて、治らない病気

では最後に珍しくて、治らない病気というのはどうでしょうか?

実はここがポイントです!

ここの領域の薬を独占することができれば、競争がほとんどない、参入障壁(他の会社がビジネスに介入するのを防ぐ機能)の非常に高いビジネスができます。

ここに分類される病気は、普段医師として働いていても出会う機会がほとんどない、かなり珍しい病気です。我々医者は同じような症例を何度も経験することで、診察のポイントや、治療のコツを身に着けていきます。

しかし、この領域に分類される病気は非常に珍しいので、経験症例数もほとんどなく、治療法も確立していません。なので、医者として患者さんに対して為すすべがないのです。

こういう時、我々は対症療法と名前を付けて、苦し紛れの治療をします。

では、患者さんの立場から考えるとどうでしょう?

患者さんはただでさえ有効な治療法がなくて辛いのに、しかもその症状は重大であるため、藁をもつかむ思いで新薬を待ち望んでいます。

では、医者も患者さんも困っている状況で、今までの治療法よりも明らかな効果を期待できる新薬がでてきたらどうなるでしょうか?

ビジネスの視点-参入障壁の高さ-

先程の質問をもう一度考えてみたいと思います。

医者も患者さんも困っている状況で、今までの治療法よりも明らかな効果を期待できる新薬がでてきたらどうなるでしょうか?

答えは、医者も患者さんも、その治療法に飛びつきます。大ヒット商品になります。

しかも、その新薬は特許権で守られているので、他の会社は同じ商品を作ることができませんし、価格も自分で設定できます。市場を独占できるのです。

結果、製薬会社はぼろ儲けすることができます。

この考え方はPaypal の創始者、Peter Thiel氏の著書 “ZERO TO ONE” でも紹介されています。

(Peter Thiel氏↓)

Wikipediaより引用)

「創造的な独占とは、全員に恩恵を与え、創造主にとっては持続的な利益をもたらす商品です。それに対して、競争とはだれにも利益をもたらさず、意味のある差別化もなく、生き残るのに必死になります。」

“Creative monopoly means new products that benefit everybody and sustainable profits for the creator. Competition means no profits for anybody, no meaningful differentiation, and a struggle for survival.”

(ZERO TO ONE, Peter Thiel, Virgin books, p35)

では、この領域において他の治療薬を作り出せばよいのではと思うかもしれませんが、これがとても難しいのです。というのも、非常に珍しい症例であるため、データを集めることが簡単ではないのです。

治療薬を作るには、患者さんに関するデータや、薬がどのような反応を示したかというデータが必須です。こういう珍しい病気は、その病気の専門の医師がいる大きな病院に紹介されるため、一つの病院でデータが蓄積されることが多いです。

しかし、そのデータや患者リストは、新薬を開発した製薬会社が既に握っています。この時点ですでに参入障壁(他の会社が新しくビジネスに介入してくるのを防ぐ効果)が非常に高いです。

では仮に、別の製薬会社が患者のデータを手に入れて、他の治療薬を開発できたとしましょう。この場合、新しい治療薬を開発した会社は有利になれるのでしょうか?

実はこれも非常に難しいです。

医者も患者も、使い慣れた薬を非常に好みます。というのも、どんな効果が期待できて、どんな副作用が出るかが良く分かるからです。実は、薬を変えることで、今までコントロールできていた症状がむしろ悪化するなんてことはざらにあります。

てんかんの例

最近でも、ニュースになりました。

全国的に医薬品の供給が不安定になり、てんかんの治療薬を変更する必要がでてきました。しかし、変更と言っても、先発医薬品をジェネリック医薬品に変えるだけで、主成分自体やその濃度は変わりないのです。

なので、基本的には “同じ薬” のはずです。しかし、ダメなのです。

ジェネリックに変えたことにより、てんかん発作のコントロールが悪化したという報告が出ているのです。主成分自体は同じでも、その他添加物の影響で薬の効果が変わるという報告は意外に多いです。

外用薬の例

ジェネリックでも効果が違う一例としてステロイドの外用薬(アトピー性皮膚炎などの治療薬)があります。

同じ主成分のステロイドでも、先発品と後発品で効果の違いが指摘されていますが、その理由として薬の中に溶けている主成分の濃度に違いがあるからです。

(出典:ヴィジュアルでみるステロイド外用薬の使い方ガイド、2015年、秀潤社、江藤隆史、大槻マミ太郎、18p)

また他の塗り薬にアシクロビルクリーム(ヘルペスの治療薬)というものがありますが、これも先発品と後発品で皮膚透過量(皮膚に薬が行きわたる能力)に大きな違いがみられます。

(出典:ヴィジュアルでみるステロイド外用薬の使い方ガイド、2015年、秀潤社、江藤隆史、大槻マミ太郎、19p)

ジェネリック医薬品が絶対にダメというわけではありませんし、ジェネリックに変えることでコントロールが絶対に悪くなるというわけではありません。

しかし、我々医者は薬を変えることで効果が変わる可能性があるということを常に頭の片隅に入れています。

新しい薬は全てよいのか?

じつは、医師の認識では新しい薬が全て良いとは思っていません。

上記で記した通り、新しい薬や後発品に変更することで、今までと治療成績が異なるリスクがあります。

また、古い薬は治療成績や副作用のデータがしっかりと蓄積されているため、使いやすいというメリットも実はあります。

つまり何が言いたいかと言うと、

下の図の一番右下、治らなくて、珍しい病気という領域

で一度確立した治療というのは中々塗り替えることができなく、非常に参入障壁が高いということです。

では、患者と医者はいつ治療を乗り換えるか?

上の例でも出た通り、患者や医者が新しい治療法に飛びつくのはハードルが高いです。

では、どういった場合に患者や医者は薬を乗り換えるのでしょうか?

それは、

①今まで治療法がなかった領域に、新しい治療法が見つかった時

②今までの治療法と比べて、明らかに良いメリットを得られる治療薬が出現した時

です。

言い換えると、

①何もない状態が、あるに変わる。0が1になった時

そして、

②もともとあるものが、素晴らしく良くなる。1が10になった時

です。

この2つの場合、患者が得られるメリットと、病状が悪化する可能性というデメリットを考慮した際に、メリットが明らかにデメリットを上回るのです。

この考え方は先ほどのPaypal の創始者、Peter Thiel氏の著書 “Zero to One” でも紹介されています。

この本で独占的な技術についての項目で、GoogleやAmazon、Appleの例が出されていて、こんな記載があります。

「原則として、独占的な技術というものが本物の独占的なアドバンテージになるためには、似通ったものと比べて少なくとも10倍以上良くなければいけない。」

“As a good rule of thumb, proprietary technology must be at least 10 times better than its closest substitute in some important dimension to lead to a real monopolistic advantage.”

(ZERO TO ONE, Peter Thiel, Virgin books, p48)

なので、治療の領域で他社を凌駕するには、他の治療と比べて10倍近く、メリットがないといけないのです。

Royalty Pharma のすごさ

ここで、Royalty Pharma が持っている特許権の図をもう一度見てみます。

(2022年のsecond quarterly report, Royalty Pharma 10-Q Quarterly Report より)

ここには計18個の個別の特許権が並んでいます。

では、これらの特許権が “治る、治らない” 、”一般的、珍しい” の図で分けるとどうなるでしょうか?

こうなります。

18個のうちの、11個は、治らなくて、しかも珍しい領域の薬です。

そして、”治らないけど一般的な病気” に分類される中でも、Xtandi、Trodelvy、Erleadaの3つはがんの治療薬です。

Xtandi、Trodelvyは今まで治療方法がなかった患者にも新たな治療方法を提示しました(0から1へと変化)。またErleadaは前立腺がんでの死亡率が35%下がったというデータが出ています。(1から10の変化)

Erleada® improves survival without damaging quality of life in prostate cancer trial

そう考えると、18個中14個の特許権は非常に参入障壁が高いものになります。

また、Nurtec ODTに関しては、今後ファイザー社が販売をすることになったので、より大規模に販売され、売上が伸びることが予想されています。

Biohaven taps Pfizer for global Nurtec push in deal worth up to $1.24B

これらの商品のほとんどは今後売上高が伸びることが予想できますし、長期に渡り収入を得ることが可能です。

また、視点を変えると、Royalty Pharma が扱っているのは、全て ”治らない病気” の特許権であるとも言えます。

一度使い始めたら、死ぬまで一生使い続ける可能性がある薬。

そんな薬なのです。

しかもRoyalty Pharma のラインアップはこれだけではありません。

現段階では開発段階の新薬の特許権も所持しています。

これらも、認可されれば参入障壁が非常に高い製品になることが予想されます。

特に個人的に期待しているのは、2022年2月にRoyalty Pharma が特許権の一部を取得した、Aficamtenという薬です。

obstructive hypertrophic cardiomyopathy (oHCM) (閉塞性肥大性心筋症)という病気があるのですが、これは “珍しくて、治らない” 病気に分類されます。現在世の中に出回っている薬は、血圧を下げる薬を使ったりなど、対症療法しかない状態です。このAficamtenが治療薬として効果があると認められ、販売されたあかつきには、非常に魅力的な製品になるだろうと思います。

まとめ

・薬の特許権ビジネスでおいしい領域というのは、”珍しくて、治らない病気”

・”珍しくて、治らない病気”で治療薬の地位を確立することができれば、非常に高い参入障壁を築ける

・Royalty Pharma の持っている特許権18個のうち11個は”珍しくて、治らない病気”に属し、その他3つの特許権も非常に高い参入障壁を持っている

次は、Royalty Pharma の将来性について解説したいと思います。

Royalty Pharma (ロイヤリティファーマ)の将来性ーその①ー *最終的な投資の決定は皆さんご自身の判断でお願いします。私は資格を持ったファイナンシャルアドバイザーではなく、あくまでも1人の素人投資...

<参考図書>

ABOUT ME
akifune
ハリーポッターの世界にあこがれた高校生が、大学時代と初期研修後にイギリスに留学。 10年以上どうしたら英語が上達できるか考え続け、合計約3年間イギリスに滞在。 ようやく自分なりの回答を見つけ、現在は次の海外進出に向けて準備中。 美容皮膚科医。 イギリス留学、英語について発信するのが何よりの楽しみ。