Royalty Pharma

Royalty Pharma (ロイヤリティファーマ)の薬のすごさ-医者の視点でPaypal の創始者から学ぶ-

医師の視点

まずは、医師の病気に関する考え方について説明します。

病気を分類する際、色々な方法があります。

まず一つ目は、治るか、治らないか。

そしてもう一つは、一般的(コモンディジーズ )か、非常に珍しいか(レアディジーズ)

です。

これらの基準で考えた場合、こんな図が出来上がります。

一般的で、治る病気

例えば、冬によく流行るインフルエンザの場合、みんなよくかかるし、基本的には治るものだと思っているかと思います。

インフルエンザの治療薬タミフルは需要は高いですが、治ってしまえばだれも使いませんし、むしろタミフルは必ず必要なものではありません。

売れるときは売れるけど、売れないときは全然売れない薬になります。

一般的な病気で治らない

では、喘息はどうでしょうか?

喘息は一般的な病気ですが、残念ながら完治させることが難しいです。例え今は症状がなかったとしても、突然の発作のために、お守りとして吸入器を準備している人もいます。

他にも、花粉症や認知症、糖尿病、片頭痛もこの分類に当てはまります。

基本的には治らない病気なので、継続して薬が売れる可能性が高いです。そして、患者の数が多いため、ヒットすれば儲けることができます。

ただ、患者数が多いということは、症例データも集まりやすいため、新しい薬がどんどんと出てきて競争が激しいです。(花粉症の治療薬、抗アレルギー薬は本当に色々な薬が次々と出てきています。ただ最近は、舌下免疫療法で根治を目指す治療も保険適応になりました。)

この領域で売れる薬になるためには、他の薬にはない特徴を兼ね備えた商品である必要があります。

治るけど珍しいもの

では、治るけど、珍しいものには何があるかというと、麻疹や風疹などがあります。

ワクチン接種が一般化したお陰で、麻疹や風疹の患者さんに出会うことが、かなり珍しくなりました。そして、麻疹や風疹は、一部の人を除いて(子供や妊婦がかかった場合、大変なことになる可能性があります!)、かかったとしても治る病気になりました(特に成人男性など)。

これはビジネスとして、一番おいしくないかもしれないです。

珍しいため、販売できる数が限られます。そしてなにより、何もしなくても治ってしまう領域なので、お薬自体が売れない可能性があります。

珍しくて、治らない病気

では最後に珍しくて、治らない病気というのはどうでしょうか?

実はここがポイントです!

ここの領域の薬を独占することができれば、競争がほとんどない、参入障壁(他の会社がビジネスに介入するのを防ぐ機能)の非常に高いビジネスができます。

ここに分類される病気は、普段医師として働いていても出会う機会がほとんどない、かなり珍しい病気です。我々医者は同じような症例を何度も経験することで、診察のポイントや、治療のコツを身に着けていきます。

しかし、この領域に分類される病気は非常に珍しいので、経験症例数もほとんどなく、治療法も確立していません。なので、医者として患者さんに対して為すすべがないのです。

こういう時、我々は対症療法と名前を付けて、苦し紛れの治療をします。

では、患者さんの立場から考えるとどうでしょう?

患者さんはただでさえ有効な治療法がなくて辛いのに、しかもその症状は重大であるため、藁をもつかむ思いで新薬を待ち望んでいます。

では、医者も患者さんも困っている状況で、今までの治療法よりも明らかな効果を期待できる新薬がでてきたらどうなるでしょうか?

次のページで参入障壁について考えてみます。

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ABOUT ME
あきふね
ハリーポッターの世界にあこがれた高校生が、大学時代と初期研修後にイギリスに留学。 10年以上どうしたら英語が上達できるか考え続け、合計約3年間イギリスに滞在。 ようやく自分なりの回答を見つけ、現在は次の海外進出に向けて準備中。 美容皮膚科医。 イギリス留学、英語について発信するのが何よりの楽しみ。