以前の記事で、不動産サイトを使って賃貸を探す方法について解説した。

今回は気に入った物件を見つけた後、どのようにして賃貸契約を結んだか、私の経験を記録したい。
今回記録する賃貸契約は2018年12月時点のものなのだが、実は2019年6月1日から賃貸契約に係る法律が大きく改正された。
契約時に不正な請求をされないためにも、気を付けたいポイントを記載したいと思う。
(この記事の情報は2021年8月25日時点での情報をもとに作成しています。実際に契約する際はその時点での法律に従ってください)
物件を見つけたら、下見の予約を取る
Rightmove や Zoopla で気に入った部屋を見つけたらまずは Viewing (下見)をしたいと連絡を取ってみる。
Viewing の申し込みは、Rightmove や Zoopla のサイトから簡単に行うことが可能だ。
詳しい申し込み方法は、以下のページを参考にして欲しい

自分が申し込んだのは、Hammersmith にある、Sovereing Court というマンションだ。
実は、同じ建物の中でいくつか空き部屋があり、担当している不動産屋もそれぞれ違ったし、値段や部屋の条件も全然違った。
なので、そのうちのいくつかに下見をしたいと申し込みをして、実際に下見をしてからどの部屋にするか決めようと考えた。
しばらくするとこんな感じで不動産屋から連絡が来た。

ここで、
- いつ下見をするか
- どこに集合するか
など事前に決めて、約束の日当日に実際に下見にいった。
下見と値段交渉
実際に下見した物件は£2450/月の 2 bed room flatだった。

実はこの物件にたどり着くまでに、沢山の物件を実際に下見していた。
不動産屋サイトで見た物件数は数知れず(西ロンドン、南ロンドンの物件は一通り全て目を通したと思う。)
実際に下見に行った物件も、ここ以外に5件以上はあった。
予算は2人で£2000/月以内で、ベッドルームが2つはあることが条件だったので、この Sovereign Court は少し予算オーバーだった。
ただ、この物件を見た瞬間、とても気に入り、少し予算オーバーだがここにしようと決めた。
下見を担当してくれた人に、
「ここがすごく気に入ったのだが、少し予算をオーバーしている。少し値下げしてもらうことはできないか」
とダメもとで相談したところ、
「一度 Landlord (家主) に交渉してみる」
と言ってくれて、
「数か月分事前にまとめて支払いが可能であれば、£ 2300/月も可能とのこと」
と値下げ交渉が成立した。
私が契約した不動産は “Benham and Reeves” という不動産会社で、ロンドン在住の日本人スタッフも在籍しているようで、日本語でも対応してくれる体制だった。
Holding deposit の支払い
正式に契約したい旨を担当に伝えると、Holding deposit を支払うように連絡がくる。

私の場合、上のメールと一緒に、 “Offer Confirmation” という書類がメールに添付されていて、そこに、2週間分の賃料、£1150 を先に支払うよう書かれていた。
この “Holding deposit” というのは、物件を仮押さえするために必要な費用だ。
この Holding deposit はどんなものかと言うと、
- 支払うことで、その物件が他人に渡ってしまうことを阻止できる
- 契約成立した際は、支払うべき賃料の一部として充てられるか、返金される
- Landlord (家主) の都合で契約破棄になった場合は、全額返金される
- tenant (借主)の都合で契約破棄になった場合は、返金されない
- 2019年6月1日からの法律改正以降は、賃料の1週間分までに変更となった
などがあげられる。
さて、実際に自分が Holding deposit を支払おうとした際、本来であれば £ 1150 であるはずが、£ 36.80 上乗せされた、£ 1186.80 になっていた。
これについて尋ねてみると、

と連絡がきて、クレジットカードで支払おうとすると Credit card charge というものが発生するらしい。
結局、銀行口座からの送金で入金することにした。
ここで一つポイントなのだが、イギリスの銀行口座で送金する際、”reference” を入力する欄がある。
そこに、契約する物件の住所を記載した上で送金する方が良いかもしれない。
私の場合、不動産会社の銀行口座に送金したものの、reference に住所が記載されていなかったため、入金確認に時間がかかると言われてしまった。

ただ、たとえreference に住所を記入していなかったとしても、送金した記録のスクショを送ったらすぐに確認を取ってくれた。

身分証明
Holding deposit の支払いと同時に必要なのが、身分証明だ。
これはイギリスの法律 (UK Money Laundering Legislation) でどうやら規定されているらしい。
私の場合、パスポート、YSMのBRPを提出し、現住所と連絡先(電話番号、メールアドレス)を伝えた。
この物件の賃貸契約を結んだ2018年12月時点では、身元確認のための費用、”Credit and RTR Check Fee” が1人当たり £84 請求された。(RTR は Right to rent の略)
しかし、2019年6月1日の法改正で、この費用はlandlord が支払うものであって、tenant (借主)は支払う必要がなくなった。
契約書サイン
Holding deposit の支払いが完了し、身分証明書も提出し、担当者による契約書の作成が完了したら、晴れて契約書サインとなる。
契約書となるとかなりの量の文章になるが、自分の場合は一通り目を通してから契約書にサインをした。
ただ、Benham and Reeves の場合は “DocuSign” というオンラインで契約書にサインできるシステムであったため、私は自宅のパソコンで契約書にサインをした。
もう一つ別の不動産屋、iNTERLET で以前契約した際は、実際の店舗で書類にサインをした。
オンライン、実店舗という違いはあるものの、支払いの流れや身分証明などの契約の流れはほとんど同じだった。
賃料支払い
実際に契約完了すると、賃料支払いとなる。
最初に支払う賃料は私の場合以下の内容で、合計 £20858.00 だった。
02-Rent-Demand-amended-1£20858.00 だけ見るとものすごい額がだ、以下この契約書の内容について解説していきたい。
First Eight Months’ rental in advance
2018年当時の一般的な契約は、”One year contract with a 6 month break clause” だった。
どういう意味かというと、
「契約期間としては1年ごとの契約で、入居後6か月経つまでは契約解除できない」
と思ってもらえばよい。
ただ私の場合は特殊な状況で、語学学校に通っていて職に就いていない状態で賃貸契約を結んだのだ。
実は働いていなくても賃貸を借りることはできるのだが、注意が必要で
最初の数か月分をまとめて支払うよう要求されることが多いのだ。
私の場合、他の賃貸では最初の4か月分をまとめて払ったことがある。
ただ、この物件に関しては賃料を割引してもらう代わりに、
- 6か月のbreak clause の代わりに、”One year contract with a 8 month clause” とする
- 8か月分まとめて先払い
という契約を結んだ。
どうせ後々支払うこととなる賃料ではあったが、2人分の8か月分の賃料はかなりの金額になった。
Six Week’s Rent to be held as Deposit against dilapidations
これが一般的に”Deposit” と言われるもので、日本でいう敷金に値する。
入居中特に問題がなければ最終的には返金されるお金である。
2018年当時は家賃の6週間分が徴収されていたが、2019年6月1日以降は少し変更されていて、
イングランドにおいては
- 一年間の家賃が合計£50,000 未満であれば、5週間分のdeposit
- 一年間の家賃が合計£50,000 以上であれば、6週間分のdeposit
に変更となった。
契約時に余分に徴収されないように気を付けたい。
Credit and RTR Check Fee × 2
これは身元保証をするために必要と言われた費用で、RTR とは “Right to Rent” の略である。
2018年当時は1人当たり£84(税込み) 支払う必要があった。
しかし、この費用も2019年6月1日以降は、Landlord (家主)負担となり、tenant (借主)は支払う必要がなくなった。
Tenancy Agreement Fee
これは賃貸契約を結ぶ際に不動産屋に支払う支払い手数料だ。
2018年当時は £225 (税込み)を支払ったが、 この費用も2019年6月1日以降は、Landlord 負担となり、tenant は支払う必要がなくなった。
Tenancy Deposit Scheme
これは支払った Deposit が確実に借主に返却されるのを保証する為に、保健機関に支払う金額だ。
法律によって、第三者がDeposit を管理するよう定められていて、England と Wales では
のいずれかを利用するよう求められている。
(出典)
私が利用した不動産屋は Tenancy Deposit Scheme を利用していたのだが、そのための費用 £30 (税込み)は私の支払いになっていた。
ただ、今Tenancy Deposit Scheme のホームページを見返してみると、この料金は不動産会社やLandlord が支払っていると記載がある。
出典
そのため、基本的にtenant (借主)は、この Tenancy Deposit Scheme を支払う必要がないと思われる。
もし、支払いを要求された場合は、一度確認を取ったほうが良いと思う。
Holding Deposit
これは物件を仮予約した時に支払った、£1150で、契約時の総額から差し引かれている。
送金失敗
契約書類も完成し、後は必要な金額を送金するだけと思っていたのだが、
ここで最大の落とし穴が待っていた。
Metro bank のオンラインバンキングを使って、£20858 を送金して、不動産会社にも送金完了の連絡を入れた翌日、
£ 20858 が私の銀行口座に返金されていて、しかも、銀行口座が凍結されてしまった。
口座が凍結されると何がまずいかというと、入居に必要な £20858を全く引き出せなくなってしまって、不動産屋にお金を支払うことができない状態になってしまったのだ。
入金できなければ鍵をもらうことができないし、それにもともと住んでいたところはすでに退去の日が迫っている状態だった。
結局、一緒にこの物件を借りたもう一人が立て替えてくれたおかげで数日後には入居することができたからよかったのだが、この時は本当に焦った。
Metro bank で口座を開設した時は、オンラインバンキングで送金できるという説明しかされていなかったのだが、実は大金をオンラインバンキングで送金しようとすると、犯罪の可能性があると判断されて口座が凍結されるというのを後から知った。
なので、大金を送金する際は、オンラインバンキングではなく、支店の店員に依頼した方が安全かもしれない。
結局このMetro bank の口座は再び使えるようになったのだが、そうなるまでに3週間近くかかったのと、書類をいくつか提出したりととても面倒くさかった。
鍵の受取
不動産屋に入金が完了し、確認が取れると、晴れて鍵を受け取ることができて新しい生活のスタートだ。
やはり、新しい住み家に移るのはとてもわくわくしたし、とても嬉しかったのを今でも覚えている。
退去時の手続き
退去する際は、決められた期日までに退去する旨を不動産会社に連絡する。
私の場合は、退去の2か月前までに連絡する必要があった。
当時必要とされた手続きは
- 不動産会社に退去の連絡を入れる
- インターネット、ガス、水道、電気、などの会社に連絡を入れる
- 不動産会社が指定したクリーニング業者に連絡を取り、退去時のクリーニングの依頼をする
- 不動産会社が指定した退去時の立会い業者と連絡を取り、退去時の部屋のチェックをする
があげられる。
DRF-to-TT-1全て手続きが完了すると、最終的な金額の清算が行われる。
この書類に記載されている Deposit は入居時に支払った6週間分の家賃で、ここから退去時の手数料£163.80がひかれた金額が返金された。
またこれとは別で、退去時のクリーニング代 £342は別途支払っている。
ただ、ここでもまた2019年6月1日の法律改正の話が出てきて、
今現在はこの退去時の手数料£163.80と、クリーニング代に関して、tenant (借主)は支払う必要がなくなっている。
2019年6月1日の法律改正
これまでに掲載した請求書の中に、家賃以外のいくつもの料金が含まれていたことに気が付いたと思う。
- Credit and RTR Check Fee (£168)
- Tenancy Agreement Fee (£225)
- Tenancy Deposit Scheme (£ 30)
- Check Out Fee (£163.80)
- Professional Cleaning Fee (£342)
私の場合は上記だけであったが、他には契約更新手数料や駐車場契約時の手数料など、他にも隠れた費用というものが実際には存在していた。
これが、2019年6月1日からは全てtenant (借主)側には支払いの義務が生じなくなったのだ。
これにより、賃貸契約がより理解しやすくなったことはとてもいいことだ。
しかし、残念なことも同時に起こって、
これらの料金があらかじめ家賃に上乗せされるようになったのだ。
そのせいで、ほとんどの賃貸の料金が値上がりし、感覚的には£50~100/月は上がった気がする。
家賃が上がった件は残念であるが、賃貸契約の内容がより分かりやすくなったのには変わりない。
もし、新しく賃貸契約を結ぼうとしているときに、
- 毎月の家賃
- 仮押さえに必要な Holding Deposit (1週間分の家賃)
- 最大で5週間分以内のDeposit
の費用を契約時に請求された場合は、怪しいと思った方が良い。
このサイトにも記載があるので、是非参考にして欲しいと思う。
まとめ
- 気に入った物件があったら、迷わず下見に行こう
- 2019年6月1日から施行された新しい法律により賃貸契約が大きく変化した。不要な費用を請求されないように気を付けて
- 大金を送金する際は、銀行の支店にお願いしたほうが、口座凍結のリスクを回避できる
- 新しい住み家に移ると、やっぱりわくわくする