Royalty Pharma

Royalty Pharma の新な試みーMerckとのコラボについてー前編

Royalty Pharma はなぜ Merck と提携したのか

前のページで、Merck との案件が Royalty Pharma にとってはよりリスクが高く、しかも立場が弱いことを指摘しました。

そのような状況でもこの案件を締結したのは、Royalty Pharma にとって大きなメリットがあるからです。

その理由には2つあり、

  1. 大手製薬会社との取引には大きな市場がある
  2. 大手製薬会社の心理状態を変える可能性がある

です。

大手製薬会社との取引には大きな市場がある

Royalty Pharma が大手製薬会社(ビッグファーマ)と直接取引したい一番の理由は、大きな市場が広がっていることだと思います。

以前紹介した “Research and Development in the Pharmaceutical Industry” という資料を見ると、2019年度に大手製薬会社(ビッグファーマ)が研究開発費に費やした費用はアメリカ国内で約$83 Billionとされています。

引用元:Congressional Budget Office

この $83 billion という数字に、今まで Royalty Pharma が投資をしてきた小規模の製薬会社の研究開発費は含まれていません。

つまり、手つかずの $83 billion の市場がブルーオーシャンとして目の前に広がっていることを意味しています。そしてこの額は今後さらに増加することが予想されています。

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この市場に参入することができれば、今後さらにRoyalty Pharma が投資をする機会が増えることを意味します。

その為にするべきことは、大手製薬会社(ビッグファーマ)の心理状態を変えることです。

大手製薬会社の心理状態を変える可能性がある

先程 Merck の例で解説しましたが、大手製薬会社(ビッグファーマ)は新薬開発をする上で資金繰りに困っていないことが多く、Royalty Pharma の存在が必要不可欠という訳ではありません。

なので、大手製薬会社の年間の研究開発費 $83 billion というブルーオーシャンに飛び込むには、「Royalty Pharma の存在が必要だ!」と大手製薬会社(ビッグファーマ)に思ってもらうよう、彼らの心理状態を変えさせる必要があります。

これについて、2022年第3四半期のカンファレンスコールで創業者の Pablo Legorreta 氏がコメントしています。

「一言付け加えると、私たちが大手製薬会社の心理状態と行動を変えるためには時間が必要です。そして、そうするための努力は私たちにとって、とても期待が持てます。というのも、大手製薬会社と提携することには大きな可能性が秘められているからです。ただし時間がかかります。私たちはその中に入り込まなければなりません。他の大手製薬会社の経営者達に、私たちが Merck とした取引が製薬会社にとってどのような利点を持っているかについて説明していく必要があります。」

“So one thing to just say is that it takes time for us to actually change the mentality among these big companies and how they behave. And it’s obviously an effort that we’re very excited about because we see huge potential in collaborating with big pharma, but it takes time. We have to go in. We have to talk to senior management and try to explain the benefits of a transaction like the one we did with Merck.”

引用元:Royalty Pharma

大手製薬会社(ビッグファーマ)の心理状態や行動を変えるというのはどういうことかというと、大手製薬会社(ビッグファーマ)にとって Royalty Pharma は必要な存在であると認識させて、実際に取引をしてもらうことを意味します。

そうすることで、将来的に Royalty Pharma が大手製薬会社(ビッグファーマ)と取引を行うことができるようになり、Royalty Pharma の利益がさらに伸びることを意味します。

次のページで Merck にとっての今回のメリットについて解説します。

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あきふね
ハリーポッターの世界にあこがれた高校生が、大学時代と初期研修後にイギリスに留学。 10年以上どうしたら英語が上達できるか考え続け、合計約3年間イギリスに滞在。 ようやく自分なりの回答を見つけ、現在は次の海外進出に向けて準備中。 美容皮膚科医。 イギリス留学、英語について発信するのが何よりの楽しみ。