MK-8189 の案件がもたらす意味
カンファレンスコールでアナリスト達がこの Merck との案件に注目した理由は、結局このMK-8189 がどれくらいの確率で承認されて、投資家にリターンを生み出すかを知りたかったからだと思います。
ビジネスという観点において、今回のカンファレンスコールで Royalty Pharma にとってのメリットがいくつか説明されました。
そして以下はあくまで個人的な感想ですが、今回のこの案件は Merck と提携したという既成事実を作っただけでも大きな意味があったのかなと思います(しかも、あまり大きなリスクを背負わずに)。
もちろん、MK-8189 が臨床試験を突破して市場に出回れば、Royalty Pharma にとってメリットであることは間違いありません。
ただ、たとえこのMK-8189 が臨床試験をクリアできなかったとしても、この案件は宣伝になるという点で有意義だったと個人的に思います。というのも、他の大手製薬会社に今回 Merck とコラボした例を提示し、リスク分散や新薬開発促進の利点を売り込むことが可能になるからです。いうなれば、$50 million の広告費だったとも考えられそうです。
とはいいつつも、やはり新薬の承認、販売に結びつかなければ今後いくら大手製薬会社とコラボしても Royalty Pharma の売り上げは上がりませんから意味がありません。
なので、結局はMK-8189 がどんな特徴の薬なのか、見込みがありそうなのかについて知る必要が出てきます。
ちなみに、今回のカンファレンスコールでは MK-8189がどんな性質の薬で、なぜ Merck はこの薬の開発を続けているのか、開発が成功する見込みはありそうなのか、どんな患者さんをターゲットにしているのか、この統合失調症というマーケットはどれだけおいしい市場なのかという点については詳しい解説はありませんでした。
この MK-8189 という新薬自体の特徴や見込みに関しては、専門的な医学の知識が必要になるため、後編で詳しく解説したいと思います。
次のページで Merck の案件からみる Royalty Pharma のビジネスへの期待について解説します。