Merck の MK-8189 が目指すところ
前のページで統合失調症の治療薬開発の歴史を解説しました。そして、現在の統合失調症治療薬の開発の目的は、次の世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)で出現する眠気や体重増加、糖尿病、脂質異常症の副作用をマイルドにするという点がキーポイントであることが分かりました。
つまりこれは何を意味しているのかというと、
- 統合失調症の原因を究明したり、全ての統合失調症の患者さんに効く薬を開発している訳ではない
- 統合失調症の症状抑制という意味では、ほどほどに効果を得られれば良い(副作用が強いけどもばっちりと効く薬は既に存在するので)
- 体重増加をきたさない、糖尿病患者でも使えるという、今までより使いやすい抗精神病薬を目指している
という点が挙げられます。
この3点は Merck が MK-8189 の効果に求める点と一致しています。
統合失調症は思春期頃の発症が多いですが、お年頃なのに体重がどんどん増えるという副作用は日常生活において精神的ストレスにつながる可能性があります。
また糖尿病のリスクを増加させるというのは非常にマイナスです。というのも糖尿病を患っている患者数は非常に多く、糖尿病のせいで希望する薬が使えない可能性を意味します。
よって、需要が高いし大きな収益源になりそうだからというのが、Merck が MK-8189 の開発を継続している理由です。そして、これを可能とする方法として注目されているのが、”PDE10A 阻害薬” と呼ばれる新しいジャンルの薬です。
さらに、この PDE10A 阻害薬の開発において、脅威となる競合相手がいないという点がとても重要です。
次のページで MK-8189 の正体である “PDE10A” について解説します。