洋書

英語学習のヒント~Thinking, Fast and Slow~

コロナのせいでロンドンが最初にロックダウンする直前に、Waterstonesで沢山本を買っていた。

そのなかの一つ “Thinking, Fast and Slow by Daniel Kahneman” を読んで、英語学習のヒントになりそうなアイディアが浮かんだ。

「なぜ文法を勉強したのに英語が話せないのか」、「英語を話す時に文法を意識すると流暢に話せない」、「ライティングタスクの時に文法に注意していると時間が無くなってしまう」などの疑問が今まであった。

しかし、”Thinking, Fast and Slow” を読んでから、どうすればこれらを解決できるか、糸口が見つかったきがする。

人間の思考には2種類ある

この本で解説されているのだが、人間の思考には早い思考と、遅い思考の2種類ある。

これらを呼びやすいように、早い思考を “System 1″、遅い思考を “System 2” と著者は名付けている。

“System 1” というのは、処理速度がものすごく早く、我々が普段特に意識しなくてもすぐにできる物事をするときに使われる思考回路のことだ。

例えば、我々が日本語で日常会話をするときは、特に難しい文法など意識しなくても、すらすらと日本語が話せる。

この時に使われる思考回路が “System 1” と呼ばれるものだ。

逆に “System 2″ というのは、処理速度は遅いものの、”System 1” で処理できないような内容も処理できるという特徴がある。

例えば「4919×746=」を暗算するのは難しいが、紙と鉛筆を使えば時間はかかるが処理できる。

この時に使われる思考回路が “System 2” と呼ばれる。

この “System 2” は難しい問題を解決できるものの、時間がかかってしまい、エネルギーも非常に消費するため、常に使うことは難しい。

ヒーローでいうと、必殺技みたいな位置づけだろうか。

この “System 1” と “System 2” を良いバランスで使って我々は生活している。

英語学習との関係性

ではこれら2つのシステムと英語学習がどんな関係があるのかと言うと、文法を勉強したのに英語が話せないのは、英文法を “System 2” で考えているからではないかと私は思った。

たとえ英文法の理屈は理解していても、それが “System 1” に組み込まれていなければ、すなわち、条件反射的に出てくる段階まで来ないと、使いこなすことはできないのではないかということだ。

過去完了形という文法(例: I had bee studying for hours when you visited me.) を例にして考えてみる。

過去分詞の文の作り方は、「主語+had+過去分詞形」という公式は文法書を調べれば記載されている。

そして、この公式さえ覚えてしまえば、いくらでも文を作ることができる。

この、過去完了形という文法を知っている、自分で文章を作ることができるというのは、”この過去完了形という文法が自分の System 2 という思考回路に組み込まれた” からとも考えることができる。

というのも、覚えたばかりの公式というのは、”System 2″ に組み込まれており、このシステムを使うにはエネルギーを消費するし、時間もかかってしまうのだ。

また、人間が一度に消費できるエネルギーの量は決まっていて、文法にエネルギーを割いてしまっては、文の内容理解や他のことにエネルギーを割くことができなくなってしまう。

つまりは、新し英文法を覚えただけでは、それを無意識に使える “System 1” に移行はできていない状態だといえる。

この状態だと、処理速度が遅く、時間とエネルギーが非常にかかってしまう。

だから、文法を意識して話そうとすると流暢に話せなくなったり、ライティングを時間制限内に終えることができなくなってしまう。

使える英文法を身に着けるには

ではどうしたらよいのかと言うと、残念ながら練習するしかない。

System 1 の特徴としては、繰り返すことで徐々に身に付くというものがある。

ただし注意しなければいけないのは、意識してSystem 2 を使うことを繰り返すことだ。

パソコンのタイピングも同じで、意識してブラインドタッチの練習を繰り返すことで、徐々に意識しなくてもブラインドタッチができるようになるものだ。

キーボードをいつまでも目で見ながら、人差し指のみでキーボードをたたいているのをいくら繰り返しても、ブラインドタッチができるようにはならない。

では、英文法の場合はどうすればよいのかというと、一つの文法に注目して、洋書を読む間にそれだけ集中して意識してみたり、音読したりするトレーニングが必要だと思う。

例えば、冠詞をマスターしたければ、冠詞の理論を理解したうえで、冠詞にのみ注目して洋書をいくつも読んでみる。

過去完了形をマスターしたければ、過去完了形の理論を理解したうえで、洋書の小説を読んでみるなどだ。

私の場合、冠詞に関しては、文章を読んだり書いたりするうちに、どの場面でどの冠詞を使う必要があるのか、だんだんと分かってきた。

しかし、過去完了形に関しては、理論では理解はしているものの、とっさに英語を話す時になると、まだ抜け落ちることが多々ある。

ただ、文法を覚えるだけではなく、覚えた文法を無意識のうちに処理できる、”System 1″ に移行するという意識で今後も勉強していきたいと思う。

まとめ

  • 人間の思考には早い思考(System 1) と、遅い思考(System 2) の2種類ある
  • 使える文法を身につけるには、”System 1″ を使う必要がある
  • そのためには、文法を意識した練習を繰り返す必要がある
ABOUT ME
あきふね
ハリーポッターの世界にあこがれた高校生が、大学時代と初期研修後にイギリスに留学。 10年以上どうしたら英語が上達できるか考え続け、合計約3年間イギリスに滞在。 ようやく自分なりの回答を見つけ、現在は次の海外進出に向けて準備中。 美容皮膚科医。 イギリス留学、英語について発信するのが何よりの楽しみ。