医師

医者を続けるか、続けないか

仕事を辞めたくなった時にどうしたか

結論から言うと、

まずは仕事を続け、仕事を辞めた後に何をするかを計画することにした。

初期研修医として、社会人1年目として、

仕事を本気でやめようと思ったタイミングが2回あった。

一つ目は入職して業務開始2週間くらいたった後。

もう一つは、仕事を開始して、約半年たった頃だった。

原因は、

  • ”病院でのシステムが理不尽だ”と思ったことと、
  • ”仕事をしていて全く楽しくない、辛い”と思ったことだ。

病院で働くことを辞める決心はついた。

ただ、

私は初期研修2年間は終わらせようと考え、

事実、2年間は仕事を休まず研修を続けた。

最初に仕事を辞めたいと思ったときは、

正直周りの目が気になって”辞めれなかった”

という表現が正しいと思う。

だが、2回目に辞めたいと思ったときは

”今はあえて辞めないでおこう”

と思い、自ら仕事を続けることを選択した。

我慢することは美徳なのか?

自分は高校時代にあまりやりたくなくなった部活を5年間続けた経験があった。

そのころは、我慢することが美徳のように考えていた部分もある。

しかし、

我慢して自分の嫌なことを続けても、何かいいことがあったかと言われると、

全くいいことが思い浮かばないのだ。

もちろん、

大会で入賞したり、

国体選手選考を勝ち抜き、国体選手として試合に参加できたことはとても嬉しかった。

けれども

自分のためになるためにするはずの部活なのに、

楽しいからやるはずの部活なのに、

途中から楽しくなくなって、

夏休みの宿題をいやいややる小学生みたいな気持ちになって、

思い返しても何か大切なことを学んだかと言われてもそうでもない。

”我慢するという忍耐強さを学んだじゃないか”

ともいえるかもしれないが、

それは

”困難を別の方法で乗り切り、自分の意思で自分の人生を決める”

ということを放棄して、自分の人生をただただ他人任せにしていたともいえる。

嫌なことをいつまでもするのをやめて、

その時間をもっと他の、自分がわくわくすることに使って、

自分の良いところをもっと伸ばすことに使おう。

高校の部活は、”嫌なことは無理して続けない”

と考えるようになったきっかけであった。

人間関係が心配?

とある組織から抜け出すことによって、

”根性がない”

”変人”

”部外者”

と言われるのが怖くないのか?

生きづらくならないか?

部活もしかり、会社も含め、

何かの組織から抜け出すということを考えると、

このようなことを必ずだれもが一度は考えるのではないだろうか。

もちろん自分もすごく怖い。

特に、同僚や上司との関係が密であればあるほど、

組織の名前にブランドがあればあるほど、

すごく不安になる。

ただ、結局のところ、今となってはあんまり関係なかったなーと思う。

自分は、大学の部活も1年足らずでやめて、

後期研修もやらずに、一度医者を辞めてみたが、

とても幸せな人生を送れていると思う。

きっと、自分にとって

他人にとやかく言われたり、

人間関係が断たれることのデメリットよりも、

自分の好きなことを、とことん突き詰める幸せの方が

比較できないくらい大きいのだと思う。

それに、人間関係についていえば、

自分に合わないと思った組織を抜けた後の方がいい気がする。

顔も見たくないひとと会う必要はもうないし、

本当の友達や親しい人であれば、

そんなこと関係なしに連絡をよこしてくれたり、

良好な関係を続けてくれる。

実際、初期研修の後にそのまま後期研修をしないことで、

価値観の合わない上司や同僚と過ごすストレスはゼロになった。

そして、

研修医時代に自分に良くしてくれた同僚や、上司はとても良くしてくれた。

やはり、

自分にとって嫌なことはとっとと辞めて、

自分の好きなことをすることはメリットしかないように思える。

なぜ仕事を辞めなかったか

では、なぜ初期研修医をすぐに辞めなかったのか。

いくつか要因があるが

  1. 入職してすぐ辞めるのは、さすがに気が引ける
  2. 研修医代表という役職を与えられてしまって、気まずい
  3. 仕事を辞めて、何で稼げばいいか分からない
  4. 1か月半毎に次の科に移動できる
  5. 2年間の研修は国が定めた義務
  6. 仕事を辞めて何をしたいか分からない

があったと思う。

④1か月半毎に次の科に移動できる、

⑤2年間の研修は国が定めた義務

という2点は初期研修医だけの特徴かもしれない。

嫌な上司がいても、1か月半だけなら、がんばろうと思える。

終わりのないマラソンほどつらいものはないが、

研修は必ず終わるものである。

上司から教えてもらった

”全てのものに必ず終わりがある”

というのは今でもいい言葉だと思っている。

また、

⑤2年間の研修は国が定めた義務があることで、

たとえ初期研修を脱落しても、

今後医師として勤務したり、アルバイトをするのであれば、

この条件は必ずクリアしないといけないのだ。

逆を言えば、

最低この2年間さえ乗り切れば、

一応研修は終わったことになるし、

やろうと思えばバイト医として食べていくこともできる。

なので、最初仕事を辞めたいと思った時、この2つを強く意識して頑張った覚えがある。

その数か月後、再び仕事を辞めたいと思う機会があったが、この時初めて

”社会人として留学すればいい”

そう

ワーホリに行く

という選択肢を思いついた。

ワーホリという選択

入職して約6か月、ちょうど仕事を辞めたいと思った頃だった。

将来進みたい科も、特に希望がない。

強いて言えば病理学が好きだが、一年中死に物狂いで働いて、

何かミスをしてしまった時は全責任を追及される生き方はしたくない。

自分が好きなのは、病理学という病気の原因を考えることであって、

病理医の生き方にあこがれていた訳ではない。

仕事はやめたい、だけど、医者以外で自分が生き残る方法が思いつかない。

ちょうどその頃、世間では皇室の佳子様がリーズ大学に留学する話題がニュースに流れていた。

たまたま同僚に

”自分もこの大学に行ってたんだよね、いいなー俺も行きたいなー”

と話したら、

”だったら行けば良いじゃん”

と一言。

そうか、

誰も医者が海外に行っちゃいけないなんて言ってない。

行きたければ行けば良いんだ。

確かワーホリって、働きながら留学できるんだっけ?

働ければ収入も確保しつつ、今後どうしたいか考える時間を作れる。

何より、自分の好きな英語を好きなだけ学ぶ時間を作れる。

初期研修が終わって、そのまま後期研修をして、

嫌な上司や職場で我慢する必要もない。

ワーホリを決意した瞬間だった。

正直、初期研修が始まってから、

ストップすることのない、満員バスの中に乗り込んでしまった気分だった。

一度乗り込んでしまったら再度、途中下車なんてできない。

決められた道をただひたすら前に進む。

そう思っていたし、そう思い続けていれば、

自分は今頃病理の専門医になるために、一生懸命に病院で働いていただろう。

けれども、

”ワーホリ”という途中下車の方法に

気が付いてしまったのである。

親に出してもらって行く留学だけが全てではない。

むしろ、自分で稼いだお金を使って留学してこそ、

本気で勉強するし、がんばろうと思った。

ライフラインの確保はどうするか

自分がすぐに仕事を辞めなかった最大の理由は、

ライフラインを確保する準備をする為だった。

ワーキングホリデーに行くことは決めた。

自分の好きなことを目指して追いかけるのはいいとして、

現実問題としてお金の問題が残った。

ワーホリで稼げるといっても、

カフェやバーの店員の給料はたかが知れているし、

知人やネットの情報を知る限り、

自分はとても農場やガソリンスタンドのバイトを生き残れる気がしなかった。

どのみち初期研修は終わらせないといけない。

じゃあ、残りの1年半くらいは頑張って仕事をしよう。

その間に、がんばってお金をためて留学資金にしよう。

初期研修を修了すれば、とりあえずバイトができるようになる。

働き先がなくて、自力で生きていくことができなくなることはないだろう。

自分の夢のために準備をしていると思った瞬間から、

心に少し余裕ができた。

”一生この生き方をしなければいけない訳ではないんだ”

と思うことができるようになった。

私の場合、

ある状況下に置かれると、あたかもそれが全てのように思ってしまうことがあったが、

案外世界は広くって、

世の中にはいろんな生き方をしている人がいるし、

仕事を辞めた人も、案外しぶとく生き残っているものだと考えるようになった。

現にこのブログを書いている2021年2月現在、自分は今も生き残っている。

もちろん、

より良いバイト案件を担当したり、

社会的な信頼を得るためには、

後期研修まで終了して、専門医を取得することが一般的だと思う。

けど、自分みたいなひねくれものでも、案外と生きていけるものだと今となっては思う。

とにかく、留学の決心がついてからは、可能な限りお金を貯めた。

コンビニでバイトした方が時給は高かったし、

飲み会の帰りはなるべくタクシーは使わず、

2時間くらいであれば頑張って歩くようにした。

そんなこんなで貯めた貯金額は、合計で400万円近く。

結局、この400万じゃあ、ロンドンでの生活に全く足りなかったのだが、

自分の人生の方向性を大きく変えるための、

最初の一歩となる、とても大切な400万円だった。

振り返ってみると、

研修医としての勤務を続けたことはお金を抜きにしても無駄ではなかったと思う。

普通の人にはできない貴重な学びを数多く得られたし、

自分の今の生き方に大きな影響を与えていると思う。

今後同じことを続けるつもりはないものの、決して無駄ではなかったなと思える経験であった。

まとめ

  • 仕事を続けながら、次の事をする為の準備をする。
  • 嫌なことを辞めることでのみできる経験もある。
  • 本当の友人との付き合いは、たとえ状況が変わっても続く。
  • 社会人でも留学できる。
  • 大体何とかなる。ライフラインを確保しておくと安心。
ABOUT ME
あきふね
ハリーポッターの世界にあこがれた高校生が、大学時代と初期研修後にイギリスに留学。 10年以上どうしたら英語が上達できるか考え続け、合計約3年間イギリスに滞在。 ようやく自分なりの回答を見つけ、現在は次の海外進出に向けて準備中。 美容皮膚科医。 イギリス留学、英語について発信するのが何よりの楽しみ。