新商品が利益をつぶす?
おそらく質問を下さった方は、こう思われたのではないかと推測します。
「既にヒット商品を持っているのに、それに対抗する新商品を開発するのはなぜか?今あるヒット商品が売れなくなってしまうのではないか?」
例えば、任天堂のゲームの歴史を考えてみましょう。
私が小学校1年生の時、ゲームボーイの初代ポケットモンスターが大ヒットしました。そのまま同じものを販売してても利益を得ることができたと思います。しかし、ゲームボーイはゲームボーイカラーの登場で姿を消し、そのゲームボーイカラーもゲームボーイアドバンスの登場で姿を消しました。その後も同様の世代交代は続き、ゲームボーイアドバンス→DS→3DSと変遷し、今ではSwitchが当たり前の時代になりました。
他にも、スーパーファミコン→Nintendo 64→ゲームキューブ→Wii→Switchという変遷も見られます。
たとえ人気があるゲーム機(ただしWiiを除く)でも、新しいゲーム機の登場でその収益はがた落ちし、姿を消してきたことが分かります。
このように、新しい商品が登場することで過去の商品は姿を消すという傾向が製品開発にはみられます。
この考え方をcystic fibrosis(嚢胞性繊維症)の治療薬に当てはめてみましょう。
すると、
「既にtrikafta(トライカフタ)は大ヒット商品であって、魔法の薬とまで言われている。しかも、trikafta の特許は2037頃まで切れないので、長期に渡って安定して収入が得られる。この薬があれば十分なのに、さらに新しい薬を開発するというのはどういうことなのか?開発費用もかかるし、trikafta から得られる収益を自分でつぶすことにならないか?それならば、別分野の治療薬を開発した方が、より収益を得られるのではないか?」
という疑問が浮かぶのではないでしょうか?
ゲーム機のように移り変わりが激しくて、常に新しいものが求められる業界であれば理解できる。しかし薬のように今後10年以上収益が保証されている場合はどうなのか?
その疑問の答えとして、
「cystic fibrosis の数々の治療薬はそれぞれ違う症状にアプローチしていて、新しい薬は別の症状を治療することができる。なので、trikaftaの収益が落ちることはない。」
という可能性が浮かぶかもしれません。
しかし、残念ながらcystivc fibrosisの治療薬に関してはそうではなさそうです。
次のページで、Cystic fibrosis について解説です。