Cystic fibrosis(嚢胞性繊維症)のそれぞれの薬は、別の症状に対するものなのか?
先に答えですが、実は現在存在するcystic fibrosis の治療薬、trikafta、symdeko、ORKAMBI、kalydecoは全て同じ症状に対してアプローチした薬ですし、開発中の新薬に関しても、全く同じ症状に対してのアプローチです。
なぜ数々の薬が全く同じ症状にアプローチしているのかを理解できると、2つ目の質問「なぜVertexは同じ症状の新薬を開発しているのか?」も理解することができます。
この章ではまず “cystic fibrosisの治療薬の仕組みと開発の歴史” について解説し、現存の治療薬が同じ症状にアプローチしている理由について理解を深めます。
そもそもcystic fibrosis とはなにか?
誤解を恐れずに一言で言うと、cystic fibrosisとは呼吸が上手くできなくなる病気です。(他にもいろいろな影響が人体にでるのですが、分かりやすくするために省略します。cystic fibrosis 患者の死因で最も多いのは呼吸ができなくなることです。)
白人に多い病気のため、一般の日本人が知ることはまずない病気ですし、日本の医学部の授業でも出てきません。もちろん日本の医師国家試験にも出てくることはまずありません。医師である私も、実際にcystic fibrosis の患者さんとお会いしたことはありません。
分類としては、珍しくて治らない病気です。
このジャンルの治療薬はとても収益性が高いという点については、過去の記事で解説しました。
この病気の症状のイメージとしては、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や喘息が一番近いと思います。
COPDもcystic fibrosis も、全て閉塞性換気障害というグループに分類され、似たような症状を引き起こします。その症状には咳や呼吸苦、痰、肺炎など様々なものがあります。
笑点の司会を務められた桂歌丸師匠も、このCOPDを患ってました。
COPDは喫煙が原因で成人が罹患する病気ですが、cystic fibrosisに関しては、生まれた時からCOPDのような症状が出現すると考えて頂いて良いと思います。
Cystic fibrosis の原因はなにか?
ではなぜcystic fibrosisだと呼吸の障害が出現すのでしょうか?それはCFTR(シーエフティーアール:the cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)というタンパク質に異常があるからです。
健常者ではこのCFTRというタンパク質が正常に働くため、肺に潤いを与えることができます。
しかしcystic fibrosis の患者さんの場合、このCFTRが何らかの理由により正常に機能しません。そのため、肺に潤いを与えることができず、COPDのような様々な症状を引き起こします。
現在存在するcystic fibrosis の治療薬である、trikafta、symdeko、ORKAMBI、kalydecoは全てこのCFTRの機能を改善することが目的の薬です。アプローチしているタンパク質はどの薬も全く同じCFTRなので、結局ターゲットにしている症状も全く同じです。
次のページでCFTR について詳しく解説です。