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Royalty Pharma にとってtrikafta が今後も期待できる理由

CFTRが機能しない原因2つ

cystic fibrosisの患者の異常なCFTR(タンパク質)が機能しない原因は

  1. 粗面小胞体でCFTRの合成が止まってしまったり、CFTRが細胞の表面まで運ばれない
  2. 異常な(不良品の)CFTRが細胞の表面までたどり着いても、上手に機能することができない

の2つです。

下の図の左側でERと書かれた構造物が粗面小胞体で、右側が細胞の表面を表しています。

A Review of Trikafta: Triple Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator (CFTR) Modulator Therapy

CFTRが合成されなかったり、合成されたとしても細胞の表面まで運ばれない場合、肺の細胞は表面にCFTRを持っていないに等しい状態です。

また、たとえCFTRが細胞表面に辿りつけたとしても、異常な(不良品の)CFTRであれば、十分な機能を果たすことができません。

なので、この2つの原因

  1. 粗面小胞体でCFTRの合成が止まってしまったり、CFTRが細胞の表面まで運ばれない
  2. 異常な(不良品の)CFTRが細胞の表面までたどり着いても、上手に機能することができない

を解決できれば、結果的にcystic fibrosis の症状(呼吸困難、咳、肺炎など)を改善することができます。

次のページでCFTRが機能しない原因2つに対する成分について解説です。

CFTRが機能しない原因2つ

2つの原因に対する有効成分

2つの原因それぞれに対する有効成分についてです。

lumacaftor(ルマカフトール), tezacaftor(テザカフトール), elexacaftor(イレクサカフトール)

まず、①”粗面小胞体でCFTRの合成が止まってしまったり、CFTRが細胞の表面まで運ばれない” というトラブルを治療する成分には、①lumacaftor(ルマカフトール), ②tezacaftor(テザカフトール), ③elexacaftor(イレクサカフトール)の3つがあります。

A Review of Trikafta: Triple Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator (CFTR) Modulator Therapy

この図の左上にも、tezacaftor, elexacaftorと記載されてますね。

さて、最初に開発されたのが①lumacaftorでその次に出てきたのが②tezacaftorです。②tezacaftorは①lumacaftorよりも若干効果的なのですが、いまいち満足いく結果が出ませんでした。そして、その次に開発されたのが③elexacaftorです。これら3つとも、粗面小胞体でCFTRを合成して、CFTRを細胞の表面まで運ぶという目的で開発されています。

ivacaftor(イバカフトール)

次に、②”異常な(不良品の)CFTRが細胞の表面までたどり着いても、上手に機能することができない” というトラブルに対しては、現在ivacaftor(イバカフトール)があります。

A Review of Trikafta: Triple Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator (CFTR) Modulator Therapy

この図では、右上にivacaftorと記載されてますね。

次のページで現在存在するcystic fibrosis の治療薬について解説です。

CFTRが機能しない原因2つ

現在存在するcystic fibrosisの治療薬について

Cystic fibrosisの原因である異常なCFTRタンパクを治療する成分として、

  1. lumacaftor(ルマカフトール), tezacaftor(テザカフトール), elexacaftor(イレクサカフトール)
  2. ivacaftor(イバカフトール)

を紹介しました。

じつは、現在存在するcystic fibrosisの治療薬であるtrikafta、symdeko、ORKAMBI、kalydecoは全て上記の単なる組み合わせなのです。

表で表すとこんな感じです。

一番左の列に4つの成分を、一番上の行にcystic fibrosisの治療薬の名前を記載しています。

例えば、Kalydecoにはivacaftorだけが入っていて、Trikaftaにはivacaftor, tezacaftor, elexacaftor の3つが入っているという具合です。

Trikaftaの名前の由来は、3つ(トリプルのトリ)+カフタ(有効成分の語尾が全てcaftor)で、3つのカフタ(-caftor)が入っていますという意味から来てます。

この図を見ると、開発の歴史も分かります。

最初に②”異常な(不良品の)CFTRが細胞の表面までたどり着いても、上手に機能することができない” という問題にアプローチしたKalydeco (Ivacaftor) が開発され、これに①”粗面小胞体でCFTRの合成が止まってしまったり、CFTRが細胞の表面まで運ばれない” という問題にアプローチしたlumacaftorが混ぜられてORKAMBI (ivacaftor + lumacaftor) が発売されました。

その次にlumacaftor の機能を少し改善した tezacaftorが開発されてSymdeko (ivacaftor + tezacaftor) が登場しました。ORKAMBI (ivacaftor + lumacaftor) よりも若干有効でしたが、症状の改善という点では今一つでした。

そんな中、Symdeko (ivacaftor + tezacaftor) に新しい成分であるelexacaftorを追加したtrikafta (ivacaftor + tezacaftor + elexacaftor) を作ってみたら劇的に効果が出るようになったという具合です。

ここで注目なのは、これらどの薬にも同じ成分であるivacaftorが混ぜられていて、tezacaftorは2つの薬に使用されている点です。過去に開発した薬に新しいものを加えて新薬として発売している実態が浮かび上がってきます。

次のページでVertex が開発する新薬について解説です。

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あきふね
ハリーポッターの世界にあこがれた高校生が、大学時代と初期研修後にイギリスに留学。 10年以上どうしたら英語が上達できるか考え続け、合計約3年間イギリスに滞在。 ようやく自分なりの回答を見つけ、現在は次の海外進出に向けて準備中。 美容皮膚科医。 イギリス留学、英語について発信するのが何よりの楽しみ。