Vertex が開発する新薬
前回の記事で、Vertex が開発する新薬の脅威が、Royalty Pharma の株価が伸び悩む原因の一つと紹介しました。
ここでようやく、本題の現在開発中の新薬について解説です。
以下のグラフをご覧ください。
一番右の列が新薬の組み合わせです。
Trikaftaは ivacaftor + tezacaftor + elexacaftor の3つですが、新薬はdeutivacaftor + tezacaftor + VX-121の3つの組み合わせです。
ここで注目するするべきなのは、
- 新薬の成分の3つのうち、tezacaftorのみtrikaftaと同じで
- 他の2つの新しい成分は何か
です。
新薬の成分の3つのうち、tezacaftorのみtrikaftaと同じ
これは何を意味するかと言うと、Royalty Pharma は既に開発中の新薬のロイヤルティをもう既に一部持っていることを意味します。
Royalty Pharma は既存の有効成分であるivacaftor, lumacaftor, tezacaftor, elexacaftor全てに対してロイヤルティ収入を受け取る権利を持っています。
そのため、新薬でtezacaftorが使用されれば、新薬の売り上げからもロイヤルティ収入を受け取ることができます。
どれくらいの収益が期待できるかというと、
「仮に、重水素化されたKalydecoに対して我々がロイヤルティ収入の権利を持っていなくて、tezacaftorに対してのみロイヤルティ収入を受け取る権利があったとしても、新薬の売り上げの4%は受け取ることができます。」
“But hypothetically speaking, even if deuterated Kalydeco is not royalty-bearing and only the tezacaftor portion is roylaty-bearing, our royalyt on the new Vertex triple would be 4%.”
Royalty Pharma Q3 Financial Results Call Transcript
とのことで、新薬の売上高の4%は確実に手に入るという根拠はここからきています。
他の2つの新しい成分は何か
では残りの2つ
- deutivacaftor
- VX-121
についてはどうでしょうか?
Deutivacaftor
実はこれ、Deut- (重水素)+ ivacaftor なので、重水素化されたivacaftor なのです。つまり、もともとある成分である、ivacaftor の元素の1つを重水素に変えただけです。
イメージとしては、コカ・コーラ ゼロと、コカ・コーラ プラスの違いみたいな感じです。本当に、もともとの物は同じだけど、ちょっと成分を変えた程度。
本家のコカ・コーラ ゼロが ivacaftor、そして、新しく出たコカ・コーラ プラスがdeutivacaftor(コカ・コーラ ゼロに難消化性デキストリンを追加したのがコカ・コーラ プラスという認識ですがいかがでしょう?)。
もうほぼほぼ同じものなのですが、ロイヤルティ収入を受け取る権利と言う点では、Royalty Pharma とVertex の見解は一致していないようです。
もちろんVertex は別物として考えていますし、Royalty Pharma は同じものと考えています。
もし、このdeutivacaftor は ivacaftor と同じと認められた場合、新薬の有効成分3つのうち2つに関してはRoyalty Pharma がロイヤルティ収入を受け取れることを意味します。
その場合、
「deutivacaftor と tezacaftor が含まれる新薬から得られるロイヤルティ収入は売上の8%になると予想できます。」
“If that’s the case, our royalty on the new Vertex triple where the deuterated Kalydeco and tezacaftor components are royalty bearing would be 8%.”
Royalty Pharma Q3 Financial Results Call Transcript
とのこと。
ちなみに、
「現在trikaftaから得られる収益は、売上の9%であるため、8%になっても大差はないと思われます。」
“And this isn’t much different than our royalty on Trikafta, which is a little over 9%.”
Royalty Pharma Q3 Financial Results Call Transcript
とのことです。
つまり、新薬が開発されたとしてもRoyalty Pharma は新薬からロイヤルティ収入を受け取ることができることを意味し、しかもtrikafta とほぼ同じ程度のロイヤルティ収入が得られる可能性も残されています。
VX-121
これについては、詳細が明かされていません。
ただ一つ言えるのは、立ち位置としてはtrikaftaのelexacaftor と同じということです。
結局、粗面小胞体でCFTRの合成が止まってしまったり、CFTRが細胞の表面まで運ばれないという点を解決する薬であることは変わりがありません。
次のページで新薬の有効性について解説です。