キャッシュフローから企業の価値を判断する。
ある企業の価値を判断する場合、キャッシュフローに注目する方法があります。なぜなら、キャッシュフローに注目すると、
- 企業の価値を数値で表す
- 企業の安全性を調べる
ということが可能だからです。
企業の価値
企業の価値は、その企業がどれほどのキャッシュ(現金)を生み出せるかによります。ある企業が競合他社との比較してより多くのキャッシュを生むことができるならば、前者はより価値が高いと考えることができそうです。
同じ株主資本、負債、資産を持っていても、生み出せるキャッシュの量によって、企業価値が異なる例については以前紹介しました。
企業の安全性
潤沢で、安定したキャッシュフローをある企業が持っているということは、その企業の安全性が高いことを意味します。企業が倒産するのは現金が底をついた時です。一般的にこの安全性を示す指標として、”負債資本倍率(debt to equity ratio)” というものが使われています。負債が多くなりすぎると借金の返済が滞り、倒産する可能性が高いと判断されるからです。例えば、アメリカ最大の通信事業者であるAT&TやVerizonなどは巨額の負債を抱えており、安全性が疑問視されることがあります。
例えば、AT&Tの負債資本倍率(debt to equity ratio) は2022年の途中で113.3%まで上昇しました(現在は93.8%)。しかも、負債の額は一時期$211.32 billion という額まで一時期膨れ上がりました。
Verizon の場合、負債資本倍率(debt to equity ratio) は2022年現在170.0%で、負債総額は$150.92 billion にまで膨れ上がっています。
これらの数字がどれだけすごいかというと、世界の負債番付で上位に入り込むレベルです。
(これは2022年の途中の経過のため、AT&Tが世界第2位にランクインしてます。現在負債額を減らしたため、ランキングの順位が変わっていると思われます。しかしそれでも負債額でランキング上位に入ることに変わりありません。)
負債だけ見ると企業の安全性を疑問視する声があがるのも納得できます。しかし、AT&T、Verizon は安全という真逆の意見があるのも事実です。これが、AT&T、Verizon は投資家の好き嫌いがはっきりと分かれるといわれる理由の一つです。
それはなぜかというと、これらの会社は非常に安定したキャッシュフローを見込むことができるからです。今やスマホは多くの人にとってなくてはならない存在であり、スマホを使うのに必要なインターネットは現代人の必需品です。AT&T、Verizonのサービスは多くの人が定期的に使用する必要性があり、安定して収益が望めるビジネスです。また、AT&T、Verizon、T-mobileの3者間では競争が繰り広げられてはいるものの、この3者で5Gネットワークを構築する為に必要な”権利” を寡占しています。その権利はC-Band と呼ばれる5Gネットワーク構築に必要な周波数の利用権なのですが、これは法律によって厳しくコントロールされています(つまり、法律により独占権が認められているとも考えられます)。さらに設備投資も莫大な金額に上るため、参入障壁が非常に高いビジネスなのです。
(ちなみに、このC-Band を一番多くもっていて、5Gネットワーク構築に優位性があるといわれているのが Verizon です。ただし、Verizon はこの権利をフルで使用できるようになるまでもう少し待つ必要があります。現在はT-mobileが優位な5G市場ですが、AT&Tは既に様々なプランで顧客を獲得する反撃に転じていますし、Verizonも獲得済のC-Band がフルで使用できるようになった際に強力な反撃を始めると思います。)
これらの特徴をAT&TやVerizon は持っているため、巨額の負債を抱えていても安定したキャッシュフローを得られて、安全だと言われるのです。
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