DCF法の価値に加えて、PER、PBRも考慮する
企業の価値を判断し、安全性を考慮する上でキャッシュフローという観点が非常に大切であることをここまで解説しました。しかし、企業の価値を判断する際、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)という数値も一緒に考慮する方が良いと思います。これらの数値をDCF法で算出される企業の適正価格と一緒に分析することで、なぜその株が割安になっているのかという理由を探ることができます。
ある企業が割安であるパターンとして、
- ”株価<DCF法の適正価格” だが、PER や PBR が割高を示す
- ”株価<DCF法の適正価格” かつ、PER や PBR が割安を示す
の2パターンがあります。
”株価<DCF法の適正価格” だが、PER や PBR が割高を示すパターン (Royalty Pharma や Amazon)
いくつかの企業は高PER、高PBRであるにも関わらず割安であると判断されます。例えば、Royalty Pharma は2022年11月04日時点でPER 39.7倍、PBR 3.1倍とPER、PBRから見ると非常に割高と考えられます。
しかし、ここで大切なのは、GAAP(一般会計原則)で算出された純利益(earnings) は Royalty Pharma の本来の利益を表していない点です(Provision for changes in expected cash flows from financial royalty assetsの影響があるため)。そのため、本来の利益を知るためにはnon-GAAP(会社独自の会計基準)である、Adjusted Cash Flow, Adjusted Cash Receipts などのキャッシュフローで判定する必要があります。
そこで、キャッシュフローに注目したDCF法で価値を調べると、
と、2022年11月2日に米国の政策金利がさらに上昇した現在でも約60%近い割引価格で取引されていることが分かります。
これはAmazon でも同じことが言えます。
2022年11月4日時点、Amazon のPER は83倍、PBR は6.8倍、キャッシュフローから算出した適正価格(Fiar Value) は約60%の割引価格となっています。
Amazon の場合も Royalty Pharma と同様で、キャッシュフローとGAAPで表示される純利益に大きなギャップが生じています。これは、一般会計方法であるGAAPで算出されるAmazonの利益には多額の減価償却費が計上されているので、実際には潤沢なキャッシュフローがあるのに利益が縮小されて見えるからです。
この、株価<DCF法の適正価格” だが、PER や PBR が割高を示すパターンの企業は、”強いキャッシュフローを持っているのに割安で放置されている有望な会社” といえます。
次のページでPER、PBRが割高な株について解説です。