Royalty Pharma

Royalty Pharma (ロイヤルティ・ファーマ)の株価が低迷している理由

Cystic Fibrosis Franchise (嚢胞性繊維症の治療薬群)の収益が大きく減少する可能性

Royalty Pharma の収入のうち、Cystic Fibrosis Franchise が占める割合は少なくありません。

Royalty Pharma 10-K Annual Report 2021

2021年度のAnnual Reportを見ると、Cystic Fibrosis Franchiseが収入のうちの約27%を占めることが分かります(trikafta、symdeko、ORKAMBI、kalydecoの合計)。このCystic Fibrosis Franchise(嚢胞性繊維症の治療薬群)はRoyalty Pharma にとって非常に大きな稼ぎ頭となっています。

ところが、Cystic Fibrosis Franchiseの治療薬(trikafta、symdeko、ORKAMBI、kalydeco)を手掛けるVertex 社は新薬を開発していて、それがRoyalty Pharma にとって脅威になるのではないだろうかという懸念が2021年に入ってから出始めます。次第に、Royalty Pharma 担当の各社投資アナリスト達はこのままで大丈夫だろうかとカンファレンスコールで質問を投げかけるようになります。

2021年5月のRoyalty Pharma のカンファレンスコールでは

「ここ最近Vertex社はカンファレンスコールで、cystic fibrosis の新薬候補を開発していて、そしてその薬のロイヤルティ支払いを減らす可能性があると発表しています。この新薬によってRoyalty Pharma が得られるロイヤルティはどう変化するでしょうか?」

“And then second, Vertex has been advocating at recent investor conferences that it’s excited about novel cystic fibrosis candidate development, including potentially reducing royalties as part of that. Could you remind us about your position and next developments to watch(?)”

David Reed Risinger – Morgan Stanley, Research Division – MD in Equity Research and United States Pharmaceuticals Analyst, Royalty Pharma Q1 2021 Financial Results Call Transcript

と質問が投げかけられました。

そして、2021年7月28日にVertex 社からニュースが発表されました。それは、開発中のCystic Fibrosis の新薬が第2相臨床試験で良い結果を出したこと、そして、その結果を受けて第3相臨床試験を開始するという内容でした。

もともと、Cystic Fibrosis Franchiseの治療薬の中でも最も新しい “trikafta(トライカフタ)”という薬は、”人生を変える、魔法の薬”と言われていました。そしてCystic Fibrosis Franchiseのロイヤルティ収入のうち、約7割を占めるほどRoyalty Pharma にとって大切な薬です。

今後長期に渡り、”trikafta(トライカフタ)”は安定して高い収益を生み出すことができる。そして、そのお陰で、Royalty Pharma は今後長期に渡り安定した成長が期待できる。誰もがそう信じていた矢先に、新薬が開発される可能性が徐々に高まってきたのです。

より良い新薬が開発されれば、”trikafta(トライカフタ)”の収益はがた落ちする可能性が高い。つまり、IPOして約1年も経たずしてRoyalty Pharma が高い収益を安定して出せるという神話が崩壊しはじめたのでした。

もともとIPO間もない時期で株価が大きく動いていた時期であったことに加えて、このネガティブなニュースが舞い込んできた。これが、2021年に大きく株価を下げ、その後も大きく株価が上昇しない原因だと考えられます。

2021年6月、Morphosys の案件で一時期は株価が伸びましたが、その後も右肩下がりで株価は下がり続け、8月の第2四半期のカンファレンスコールでは、こんな質問が出ています。

「過去にも話していたのは知っているのですが、Vertex社が開発している新しい3剤混合の薬が承認されたとすれば、Royalty Pharma の収入にどれほど影響がでるでしょうか?」

“And then my second question, I know you’ve talked about this in the past, but when we think about the new triple that Vertex is advancing, what would that mean for your royalty levels if approved?

Christopher Thomas Schott – JPMorgan Chase & Co, Research Division – Senior Analyst, Royalty Pharma Q2 2021 Financial Results Call Transcript

続く、2021年11月の第3四半期のカンファレンスコールではこんな質問が投げかけられています。

「cystic fibrosisはRoyalty Pharmaの成長性を考える上で大きな議論の的になっています。あなた方経営陣は、Royalty Pharma の収入源を多分化して、今後5年10年にロイヤルティ収入減少リスクに備えていると言います。どれくらいのスピードで、Royalty Pharma は投資先を分散することができると考えているのか、もう少し詳しく教えてください。」

“CF has obviously emerged as a controversy in the story. And you’ve talked about the ability to significantly diversify your business away from any potential risk that may emerge here over the next kind of 5 or 10 years. Can you maybe just elaborate a bit more on the framework that you’re thinking about, about how quickly the company can diversify its business about your capital deployment rates, et cetra?”

Christopher Thomas Schott – JPMorgan Chase & Co, Research Division – Senior Analyst, Royalty Pharma Q3 2021 Financial Results Call Transcript

つまり、モーガン・スタンレーやJP モルガンなどの投資銀行などは、Royalty Pharma の将来性に多少なりとも疑問点を感じているのです。

次のページで Royalty Pharma の見解について解説です。

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あきふね
ハリーポッターの世界にあこがれた高校生が、大学時代と初期研修後にイギリスに留学。 10年以上どうしたら英語が上達できるか考え続け、合計約3年間イギリスに滞在。 ようやく自分なりの回答を見つけ、現在は次の海外進出に向けて準備中。 美容皮膚科医。 イギリス留学、英語について発信するのが何よりの楽しみ。