ビジネスの視点で見るTrodelvy
ここではビジネスの観点からTrodelvy を考えてみたいと思います。
特に注目すべき点は
- 非常に高い利益
- 今後の適応拡大
- ロイヤルティ受領期間
の3つだと思います。
非常に高い利益
先程 Trodelvy の歴史について簡単に解説しましたが、利益という点でまず注目すべき点としては Gilead 社による Immunomedics の買収です。
Royalty Pharma は Immunomedics に合計 $250 million の支援をしていて、そのうち の$75 million に関しては Immunomedics の普通株式で受け取っていました。
ところが、2020年10月に Gilead 社が Immunomedics を買収したため、Royalty Pharma は Immunomedics の普通株を Gilead 社に売却することとなりました。
その額はなんと、$384 million。
あれ、この話どこかで聞いたことあるなと思った方は鋭いです。
実は過去に解説した片頭痛薬の Nurtec ODT で見た例と同じ収益構造なのです!
Nurtec ODT の場合も、Pfizer が Biohaven を買収したことで、Royalty Pharma は利益を上げましたね。(しかも Nurtec ODT に投資をした年も、このTrodelvy と同じ2018年でした。)

今回の記事の主役である Trodelvy の場合ですが、初期投資 $250 million に対して2020年10月の時点で既に Royalty Pharma は $384 million 受け取っており、元本は回収済みです。そのうえで毎年 Trodelvy からのロイヤルティ収入を今後受け取れること意味します。
そして、そのロイヤルティ収入は2021年度の9か月と比較して2022年9月時点で2倍以上に増加していて、今後も増加していくことが予想されます。
今後の適応拡大
再度2022年第3四半期のカンファレンスコールの資料に登場してもらいましょう。

もともとは治療抵抗性のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)のみの適応でしたが、現在はその他のタイプの乳癌(ホルモン受容体陽性かつ、HER2 陰性)にも使用できるよう申請中です。
また、乳がんとは全く関係ない肺がん(非小細胞がん:NSCLC)や、尿路がん(mUC) への適応も研究されています。これは Trodelvy が攻撃対象とする “Trop-2” というタンパク質が他のがんでも見られることが分かったからです。
Trodelvy から得られるロイヤルティ収入は、Trodelvy の売上高によって決まります。この薬の適応の幅が広がって、さらに多くの疾患、患者さんに使用されれば、その分だけRoyalty Pharma の収入も自動的に増えていくことが想定されます。
ちなみに、2021年度のTrodelvy の売り上げは約 $380 million でしたが、 2026年には約 $2.3 billion と約6倍に増えることが予想されています。
ロイヤルティ受領期間
Trodelvy からロイヤルティを受け取れる期間は一生(perpetual)です。
つまり、このTrodelvy という薬がこの世から存在しなくなるまでは、何らかの形でRoyalty Pharma は一生収入を得られることを意味します。
Trodelvy の競合となる薬の参入や、Trodelvy 自体の特許期間終了により売上が低下することはあるかもしれませんが、0になることは決してないのです。
次のページでは、Trodelvy の存在を脅かす競合について解説します。