Biohaven (バイオヘブン)と Royalty Pharma
Royalty Pharma とBiohaven のビジネスについて、2022年5月17日に行われた “Royalty Pharma Inaugural Investor Day” というイベントで Brienne kugler 氏が解説しています。
(引用:Royalty Pharma Investor Day Presentation)2018年の春、Biohaven はNurtec ODT の第三相臨床試験を行っているところでした。この時点でRoyalty Pharma が必要な情報は2つありました。それは①Nurtec ODTの有効性と、②Nurtec ODTの長期的な安全性です。
①に関しては当時既にデータが出ていて、有効であることが分かっていました。しかし、②に関しては当時まだ臨床試験を行っている途中で結果が出ていませんでした。
そこでRoyalty Pharma は、第三者のコンサルタント達に協力を依頼して、千ページにもわたる臨床試験の報告書を分析し、患者毎のデータを確認したそうです。
データを検証する傍ら、Royalty Pharma は内科医にもコンタクトを取りこの新薬がどれほどの市場を見込めるかを検証したそうです。すると、これまでの片頭痛の治療では十分効果が期待できなかったり、持病(脳や心臓、消化器系の病気など)のせいで有効な薬を使えない患者が多いことが明らかになりました。
Biohaven が手掛けるNurtec ODT には将来的に大ヒットする可能性がある、そう認識したRoyalty Pharma は2018年6月、Nurtec ODT の第三相臨床試験を補助する目的で合計$150 million ($1=140円で210億円)をBiohaven に投資しました。その見返りとして、Royalty Pharmaは$150 million のうちの$100 million はNurtec ODT と Zavegepant の特許権の一部として、そして残りの$50 million分はBiohaven の普通株として受け取りました(1株当たり$45の計算)。
この取引を皮切りに、合計で4回Royalty Pharma はBiohaven に資金提供を繰り返します。
2019年3月、Biohaven はFDAにNurtec ODT承認の申し込みを検討していて、承認手続きを優先的に行ってもらうための権利(a priority review voucher) の購入を検討していました。もともとBiohaven と取引をしていたこともあり、Royalty Pharma は$125 million ($1=140円で175億円)追加で支援しました。新薬が早く承認されれば、Royalty Pharma もロイヤリティ収入をより早く手に入れることができるため、まさにwin-win の状態です。
その後、Biohaven はNurtec ODT を市場で販売するための資金に加え、第二のカルシトニン遺伝子関連ペプチド阻害薬(CGRP inhibitors)であるzavegepant の研究開発のための資金が必要になりました。そこで2020年8月、Royalty Pharma はBiohaven に対して合計$450 million ($1=140円で630億円)の追加投資を行います。$450 million のうちの$250 million はzavegepant の研究開発費として、そして残りの$200 million はNurtec ODT の市場へ導入するための資金として提供されました。
この例から分かる通り、Royalty Pharma が資金提供する理由は、第三相臨床試験の補助であったり、FDAの承認を早めるための費用だったり、新薬の市場への導入補助であったりなど、多岐に渡ります。
そして、資金提供の見返りとしてRoyalty Pharma が受け取ったものは、新薬の特許権(Nurtec ODT、Zavegepant)、Biohavenの普通株と優先株です。
この取引があったお陰で、2022年の第4四半期の売上高が非常に伸びる予定となりました。
これらの合計4回の取引で、Royalty Pharma は2020年までに合計$760 million ($1=140円で1064億円)をBiohaven に提供しました。
次のページでは、投資リターンの高さについて解説です。