新薬の有効性は?
では、現在開発中の新薬がtrikafta と比べてどれだけ有効性があるかについてですが、まだ分かりません。それをはっきりさせるための第3相臨床研究が現在まさに行われているところです。
ただ今あるデータを見ると、新薬はtrikafta と比べて効果は大して変わらないと思ってしまいます。
2021年7月28日にVertex 社からニュースが発表され、開発中のCystic Fibrosis の新薬が第2相臨床試験で良い結果を出したとホームページに載っていますが、そのデータが非常に微妙なのです。
どれだけ薬がcystic fibrosis の症状改善に効果があったかを判定するためには数値で測る必要があります。
報告書では2つの指標が使われていて、
- 健常者と比べてどれくらい息が吐けるか(ppFEV1)
- 浸透圧を調整する能力(Sweat Chloride)
の2つの結果が出されています。
しかし、サンプル数が少なすぎるということもあって、trikafta と比べて良いのか悪いのかよく分からない本当にビミョーな数値なのです(仮に良かったとしても、本当に誤差の範囲としか思えない程度)。
ちなみにtrikafta に関するちゃんとした第3相臨床研究のデータはこちらを参考にしてます。
いくらデータ上は数値が良いと出ても、症状の改善という点では意味をなさないという例は実は薬においていくつもあります(例えば血圧の薬とかがそうです。他の薬より血圧を5mmHg下げるとデータとして認められても、脳出血の予防という効果に関しては他の薬と比べて違いがないなんてこともあります)。
trikafta も新薬もアプローチしているタンパク質(CFTR)とその仕組みは全く同じです。しかも、新薬のデータとしては、今分かる範囲ではtrikafta と比べて大きな差はなさそう。さらに、実際に患者さんが実感してる効果に関してtrikaftaすげーーーってなっている状況で、これ以上どんな症状改善を期待するのか良く分からないというのが、私の個人的な意見です。
ちなみに現在開発中の新薬が承認されたとしても、市場に出てくるのは早くて2025年頃と予想されています。それまではtrikaftaを脅かす存在は出現しなさそうです。
次のページでVertex が新薬を開発する理由について解説です。